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みやざき完熟きんかん編(下)

2019年2月1日

トップランナー 産地維持へ一丸



「たまたま」解禁の初競りでは1箱5万円と過去最高値がついた=1月15日、宮崎市中央卸売市場

「たまたま」解禁の初競りでは1箱5万円と過去最高値がついた=1月15日、宮崎市中央卸売市場

 生でそのまま食べるように栽培される完熟きんかん「たまたま」。一度口にすると糖度16度以上のおいしさに驚く消費者も少なくない。今シーズンから国が定める栄養機能食品として売り出すなど、さらなる認知度アップを目指す取り組みが始まっている。

ビタミンの栄養機能を表示販売

 「皮ごと生で食べるので栄養価が高い。贈答用だけでなく、消費者が手にしやすい売り方も大事」。県果樹振興協議会きんかん部会(257戸)の河野利泰部会長(63)=宮崎市高岡町=は「たまたま」のブランド力向上を目標に掲げる。


今年、栄養機能食品として売り出した「たまたま」

今年、栄養機能食品として売り出した「たまたま」

 みやざきブランド推進本部が健康に着目し、JA宮崎経済連は今季から「栄養機能食品」として表示販売をスタートした。健康志向の消費者の関心を引くビタミンC、Eの機能や含有量を具体的に表示したオリジナル資材を作成。出荷のピークを迎える2月に県内外で試食販売や飲食店などとタイアップしたフェアを実施し、栄養機能食品としての周知と販売拡大を図る。

直面する世代交代 消費拡大目指す

 河野部会長は「きんかんは昔から風邪の予防・回復など、体に良いイメージが定着している。栄養素を表示し、家庭向けに販売することで消費拡大につなげたい」と強い期待を寄せる。


県果樹振興協議会きんかん部会の河野利泰部会長(右から2番目)とJA宮崎中央ハウス金柑部会の皆さん

県果樹振興協議会きんかん部会の河野利泰部会長(右から2番目)とJA宮崎中央ハウス金柑部会の皆さん

 直面する生産者の世代交代にも力を注いでいる。きんかんは1シーズンに4、5回花が咲くため、実のならないリスクが少ない上、ランニングコストも少ない。「摘果や収穫の手間はあるが、軽いので定年後や女性でも作業できる魅力を発信したい」と新規就農につなげる。

宮崎はひとつ ブランド守り抜く

 出荷量460㌧とトップシェアを誇るJAはまゆうハウスきんかん専門部(79戸)では若手生産者による受託作業班が活躍する。女性や高齢者が困難な剪定やビニール張りを請け負う。「年に一度しかできない作業を何度か経験することでスキルアップにもつながっている」とJAはまゆう営農指導課。

「価格を安定させ、若手の士気を上げたい」と話す長渡孝二副部会長

「価格を安定させ、若手の士気を上げたい」と話す長渡孝二副部会長

 高齢でリタイアする生産者の園地を新規就農者に譲るマッチングも積極的に行われている。県果樹振興協議会きんかん部会の長渡孝二副部会長(71)=日南市南郷町=は「30年間引き継がれてきた技と品質を維持し、次世代につなぎたい」と力を込める。

 「県全体で盛り上げ、ブランドを守り抜く」と河野部会長、長渡副部会長は口をそろえる。

 宮崎はひとつー。持ち前のチームワークを生かし、トップランナーとして走り続ける。