引退会見後、久世コーチ(右)と握手をする松田選手=12日午後、東京都千代田区
「一点の悔いもない」
リオデジャネイロ五輪など五輪3大会連続でメダルを獲得した競泳の松田丈志選手(32)=延岡市出身、セガサミー=は12日、東京都千代田区のホテルで引退会見を行った。会見には、4歳から指導を受けた久世由美子コーチ(69)も同席。松田選手は「今は本当にすっきりしている。一点の悔いもない」と28年の競泳人生を振り返った。
世界一を目指し競技に打ち込む中、ロンドン五輪200メートルバタフライで金メダルに手が届くと感じていた中で銅に終わり、結果を自分自身で消化するのに時間がかかったが、そこを乗り越えリオ五輪の銅メダルにつながったという。「金に届かなかった経験もいい思い出。五輪で獲得した四つのメダルは、今となっては一つ一つがどれも思い出深く、どれ一つ欠けてほしくない」と語った。
二人三脚で世界と戦った久世コーチへは「コーチがいなければ今の自分はなかった。女性コーチが第一線で戦う大変さはあったと思うので、結果を出さないと、という思いは常にあった。これから少しずつ恩返ししていけたら」と涙ぐみ感謝を述べた。
また「地元の応援がなければ、ここまで長くできなかった。五輪で結果を出して帰れば大歓迎してくれ、その喜びが次への原動力になった」と宮崎への思いも話した。
久世コーチは、松田選手が小学校低学年のころ初めて九州大会に出場し、8位入賞の賞状をもらった時の笑顔が忘れられないというエピソードを披露。「あの笑顔にもう一度会いたいと思い、少しずつトレーニングしていったことが結果につながった。あれがなければ、淡々としていたかもしれない」と語り、「常に夢を持たせてくれた青年と出会えてよかった」と涙をにじませた。
今後について松田選手は、終わったばかりで具体的には何も決まっていないとしたが「コーチと僕が培ってきた地方から世界で戦った経験を伝えていきたい。水泳の普及、地方での強化を一緒にやっていけたら」と水泳界への恩返しを誓った。
(2016年09月13日付紙面より)