心不全パンデミックの恐れ

宮崎県医師会 内科医会 遠藤豊

2024年09月05日掲載

 日本の平均寿命は世界第1位で、2025年には65歳以上の人口が30.3%、75歳以上が13.0%に達すると予想されています。

 近年、生活習慣の欧米化に伴う虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)や高齢化による高血圧や弁膜症、心房細動による心不全の患者さんが急増しています。心不全を含む心疾患は、がんに次いで死因の第2位です(2018年現在)。罹患者数は全国で約120万人、2030年には130万人に達すると推計されています。団塊の世代が80代を迎える2030年には高齢者の増加に伴い、高齢心不全患者が大幅に増加すること=「心不全パンデミック」が予想されています。入院が必要な高齢の心不全患者が増え、病院が受け入れられなくなる事態が想定されます。また医療費が財政を圧迫することなど、社会的な問題が起こる可能性があります。

生命を縮める「心不全」、予防することが大切
 
 ガイドラインでは一般向けに分かりやすく、「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」と定義されています。また、心不全を時間軸「Stage A、B、C、D」で分類し、早期介入の重要性を強調しています。

 まず、日常生活において心不全を予防することが大切です(Stage A、Bへの早期介入)。高血圧、糖尿病、脂質異常症、CKD(慢性腎臓病)など生活習慣病への取り組みが重要です。健診の受診率を上げることや、その後きちんと受診に結びつけることも大切です。Stage Cでは、自覚症状があるので、きちんとした心臓病の診断・治療方針を立てることが求められます。心不全の早期発見・治療が重要で、多職種チームによる疾患管理プログラム(患者教育、退院後フォローなど)や包括的心臓リハビリテーションの導入が必要です。心不全は、さまざまな心疾患がたどる終末像です。カテーテル治療の進歩も目覚ましいですが、高齢者の場合、根治することはありません(Stage D)。入退院を繰り返しながら、生活の質(Quality o f Life=QOL)が低下していくため、予後は不良です。高齢者、とくに後期高齢者は、心臓だけでなく、さまざまな疾患を抱えていることが多く、フレイル(虚弱)やサルコペニア(筋力低下)、認知症といった特有の問題を抱えています。そのため、医療機関のみならず地域全体でさまざまな職種が連携して、心不全の発症や重症化を防ぐための体制づくりが急がれています。

MEMO

予防や治療にみんなで取り組みましょう


コンテンツ

GURU GURU GOURMET

Health

旬レシピ

働くワタシ図鑑

まちがいさがし

プレゼント

lough_and_talk

発行
宮崎日日新聞社
企画・編集
宮崎日日新聞社 営業局
〒880-8570
宮崎市高千穂通1-1-33
購読のお申し込み
TEL 0120-373821