ほこりは千切り大根の大敵-。大根棚のある畑に面した農道に徐行を促す看板が設置されている

澄んだ青空の下、畑を白く染める棚

 霧島おろしをさえぎるように、白い棚が並ぶ国富町深年の高田原(こうだがはる)地区。12月から続く千切り大根干しが大詰めを迎えている。寒風を気にせず忙しそうに作業する人々や、ふんわりと仕上がった千切り大根を荷台いっぱいに積んだ軽トラックが農道を行き交う。

 同地区では、葉タバコの後作として生産。冬場の貴重な収入源だ。西風の強まる12月、傾斜をつけた幅1・5メートル、長さ50~100メートルの棚が並びだす。澄んだ青空の下、畑を白く染める棚は、郷愁を感じさせる昔ながらの農村風景。1991年に「美しい日本のむら景観百選」に選定された。

 畑から引き抜いた大根は、水洗いから千切り、棚にまくまではほぼ機械化。しかし、乾きやすいよう棚に均等に広げるのは今でも手作業だ。棚の上のみずみずしい白は、冬の日光と震えそうな強い風を受けて、滋味を増していく。それだけに日々の天気予報のチェックは欠かせない。

 太陽と寒風の恵みを受けた千切り大根は、一昼夜で完成。棒を使って棚の端から巻いていく。出来上がった千切り大根を勧められるがままにつまむと、ほのかな甘みとみずみずしさが口いっぱいに広がった。

 同地区の生産者は10戸たらず。高齢化や作業の煩雑さから、棚の数は減少している。しかし、30、40代の若手生産者が多く、生産の中心を担っているという。大根の品種や栽培などについて情報交換をし、良いものを消費者に届ける努力を怠らない。中畑稔さん(39)は「大根干しはずっと続けたいし、この眺めを大事にしたい」。白く染まった畑を見渡しながら語る姿が、頼もしく見えた。(写真部・西村公美)

【メモ】高田原地区は国富町の中心部から車で約10分。宮崎県の千切り出荷量は全国一で、国富町内ではその半分を生産している。今期の収量は約900トン(2月中旬現在)。