【評】斜面を開いた段々畑、向こう谷に見える小さな集落は、まだ陽(ひ)を受けていない。何事も合理化され、一見、便利な街場に住む人が忘れてきた、大事な風景のように思われる。整然とするマルチに、作品としての春はない。谷川の森に春の兆しが見えるころが、撮影はベストだろう。(写真部次長 沼口啓美)