港に水揚げされたばかりの魚を品定め。素材の鮮度にこだわり抜く

地域の魅力高める後継者 素材生かし客足

 2012年、北浦町古江にオープンした水産加工品直売店「あじ屋」。国道388号から古江港に抜ける県道沿いの店舗は連日、地元住民や観光客が訪れる。目当ては、料理人の経験もある磯田さんが開発した加工品の数々だ。カタクチイワシのアンチョビソース、サバのドライカレー…。北浦ならではの品を求める県外からのリピーターも増えてきた。

 03年、父親の病気をきっかけに関西から帰郷、家業の干物加工業を継いだ。地元での生活は高校卒業以来。子どもの少なさや水産業の衰退を目の当たりにした。「これからは干物だけでは食えない」。新商品開発に乗り出した背景には、そんな危機感もあった。

 もともと夢は料理人。看板商品のアンチョビソースの完成に2年を費やすなど、味にはこだわり抜いた。客足は徐々に伸び、県内外のスーパーとも取引。「質の高い商品を作れば、地方も都市も関係ない。コスト面など地方のメリットも多い」と言い切る。

 「新しいことをやるのは、家族を養っていくため」と本音をのぞかせるも、あと半分は地元への強い思いがある。「外から眺めて、あらためて感じた北浦の良さを少しでも広げられればいい」

 五ケ瀬町の藤木さんも、食をテーマに地域の魅力を発信する一人だ。自家栽培のトマト、地元の名水やワイン、北浦町の塩、西米良村のイノシシ肉。各地の逸品を素材にした「ジビエソース」は、その味に加え、それぞれの地域や素材の持つ“物語”を付加価値に外へと売り込む。

 02年に家業のガソリンスタンドを継ぐため、福岡の大学を卒業後に帰郷した。母・洋子さんは家業の傍らミニトマトを栽培。規格外で出荷できない物があることを知った。「もったいない」。単純にそう感じたことが新事業につながった。

 ガソリンスタンドと3児の母親業をこなしながら、新たな事業を立ち上げるのは骨の折れる仕事。それでも、もの作りの面白さに触れ、商品を通して地域がつながっていく喜びや楽しみが原動力となった。

 正直、家業のガソリンスタンドを継ぐのは抵抗があった。が、やるからには楽しもうと、一歩を踏み出した。「大切な家業を続け、新しい事業で地域の素晴らしさも発信できる。こんなに、やりがいのあることはない」と目を輝かせる。