台所にかまどや井戸が残る門川町本町の古民家。水屋の戸を手に「きれいに洗って鏡を付けるなど、ひと工夫すればまたいい物になるんです」と話す海野さん

居心地の良さ魅力 手をかけて再び輝き

 落ち着いた雰囲気、懐かしい空間に、居心地の良さを覚える―。全国的に古民家や古材を再利用した居酒屋やカフェ、ギャラリーが人気を集める中、本県でもブームの兆しを見せる。県内各地を巡り、古民家の魅力に取り付かれた関係者にカメラを向けた。

 延岡市土々呂町の稲田万智代さん(49)は、築76年の民家と納屋を約1年かけ改修。柱や梁(はり)、天井まで丹念に磨き上げ、2年前に2階建てのギャラリーカフェをオープンさせた。「湿度の変化で階段はギィギィ、窓は風でガタガタと音が鳴る。身近に自然を感じられることが魅力」と稲田さん。お客さんも「何時間でも居たくなる空間」と建物の良さを五感で感じている。

 150年前の欄間を残し、100年以上前の梁を使っている浜田恵美子さん(60)=門川町庵川西=宅では、ギャラリーや地区の婦人部会、学習教室を開き、地域の人から親しまれる。そろばん塾の子どもたちが丈比べをするため付けた柱の傷が歴史を物語る。「最近は展示会などさまざま。利用者が家の可能性を無限大にしてくれる。この家が私と多くの人を結び付けてくれた」と浜田さんはほほ笑む。

 古民家は一般的に、日本の伝統的な建築工法で建てられた築50年以上の木造建築を言う。建て替えや道路拡張、老朽化などを理由に毎年、全国で約2万戸の木造家屋が姿を消す。本県でも年間約400戸が取り壊され、産業廃棄物としてごみ処理されている。

 しかし、古民家の太い構造材は、自然乾燥され高い強度を持つことから、傷んだ部分を取り換えるだけで住み続けられる。さらに縁起物として、新築した家の一部に使われたり、新たに鏡台や食卓など家財道具に姿を変えて用いられたりする場合もある。

 宮崎市高岡町下倉永の製油所は、作業所の改築に併せ、使わなくなった倉庫2階部分の活用を計画中。調査・査定した古民家鑑定士の海野洋光さん(46)は「文化的価値があり産廃削減にもなるから、古民家はできるだけ残したい」と訴える。ただ、取り壊す場合も「施主の要望を第一に考え、一緒に利用法を模索します」と語り、古民家や古材に対する思いは人一倍だ。

 すすけた古材も、手をかけると再び輝きを放ち始める。人と人をつなぎ、歴史をつなぐ古民家。“モノ”の本質を見極めるため、これまでの価値観をいま一度、見直してみたい。(写真部・米丸 悟)