ボールを落とさないように基本の姿勢をキープする1年生部員。きつそうだが、どこか楽しそう
力合わせ全国目指す 富島高女子ラグビー
猛スピードで突っ込んでくる相手を低いタックルで倒し、切れ味鋭いステップでかわす-。迫力あふれる個人技はもちろん、全員で力を合わせてトライを目指すのが魅力のラグビー。その激しさから競技者が男性に集中する中、富島高では10人の女子部員が生き生きと日々の練習に打ち込む。7人制での全国大会出場を夢見る「富高ラガール」をカメラで追った。女子ラグビー(7人制)は男子と同様に2016年のリオデジャネイロ五輪で初めて実施され、競技熱は国内外で高まっている。本県も例外ではなく、スクールでプレーする小学生は増加傾向。一方で中学、高校進学後に競技を続ける環境は整っていない。
「女子選手が増えれば競技力も上がる」と堀口直樹監督(43)が立ち上がったのは、同校へ赴任して間もなくの17年。県内の女子社会人チームに所属し、中学生プレーヤーとして活躍していた現主将で2年の服部ひかるさん(16)をスカウトした。服部さんも入学後に同級生4人を勧誘、旧3年生2人を加え女子部員は昨年のうちに7人になった。
ただ、堀口監督には「激しいスポーツ。どこまで指導していいのか」との悩みもあった。パスや相手とぶつかる際の姿勢など基礎練習を反復することでけがをしない体づくりに努め、競技への恐怖心を少しずつ取り除いていった。実戦形式の練習も取り入れ、徐々に力を付けた部員たち。遠征先では全国の強豪と接戦を演じるまでに成長した。
今では全員が心から楽しんでいる。「入部当初は怖かった」と話す2年の吉元芽衣さん(16)も、男子部員と合同で行うミニゲームでは臆することなくぶつかる姿を見せて仲間を引っ張る。「タックルを決めたり相手を抜いたりするのがたまらない」。気持ち良さそうに額の汗を拭い「このメンバーと時間を共有する部活動が生きがい」と他の2年生部員に視線を向けた。
今春、新たに1年生5人が入部した。うち4人には競技経験がないものの、堀口監督は「潜在能力はいずれも高く楽しみ」。部員が10人になったことで、単独チームとして公式戦(7人制)に登録できるようになった。「このチームで全国の舞台に立ちたい」と主将の服部さん。思いは他の部員も同じ。10人はこの日も大きな声を出し、薄暮の空に吸い込まれていく楕円(だえん)球を懸命に追い掛けていた。