手打ちそばを振る舞う中山さん(手前左)。準備した30食のそばが瞬く間に売り切れになった=10月14日午後、延岡市山下町
家族のような温かさ 地域住民の協力で運営
「だんらん」を提供します-。子ども1人でも安心して通え、無料もしくは低価格で利用できる「こども食堂」。近年、子どもの貧困問題が深刻化する中、解決の一助になろうと全国的に活動の輪が広がっている。県内でも延岡、西都、宮崎市など数カ所で食堂がオープンし盛況だ。取り組みや運営の課題などをカメラで追った。こども食堂は、共働きで食事が用意できない家庭や経済的に苦しいひとり親家庭の子どもなどを対象に、栄養バランスの取れた食事や地域の人たちとの触れ合い、だんらんを与える取り組み。全国約150のこども食堂運営者の連絡会、こども食堂ネットワーク(東京都渋谷区)の釜池雄高さん(39)は活動が盛んになった要因として「『貧困』という言葉がメディアに登場することが増え、多くの人が現状を意識し始めたのでは」と考える。
西都市下妻の西都市児童館(児玉尚子館長)では、3月から月1回のこども食堂を始めた。昼食時間になっても家に帰らず外で時間をつぶす兄弟や、「おなかがすいた」と児童館に立ち寄る子どもなど満足いく食事にありつけない姿を何度も目にした児玉館長。貧困の実態に日々触れることが開設への原動力になった。開店以来想像以上のにぎわいに驚くが、児玉館長は「本当に支援が必要な子どもに利用されていない」と現状を吐露する。市内の小学校にチラシを配布し、民生委員との情報共有も密にしながら運営のあり方を模索する。
活動の継続には、ボランティアや寄付も重要になる。延岡市山下町の「こども食堂のべおか今山」は、代表の峰田知恵子さん(61)が退職を機に今夏、スタートさせた。毎週金曜日午後5時開店で、20人の会員が手弁当で運営する。「地域の方々の協力があるからこそ続けられる」と峰田代表。食堂を支える米や野菜など食材の半分は地域住民の寄付で成り立っている。手打ちそばを振る舞った同会員で宮崎そば打ち倶楽部代表の中山優治さん(70)は「地域に温かさと潤いを与える大切な存在。進んで協力したい」と力を込める。常連の岡富小6年甲斐哀翔(あいと)君(12)は「夕飯を友だちと食べることは少ないので楽しい。おばちゃんたちも優しくて家族みたい」と笑顔を見せた。
こども食堂の知名度はまだ低く、地域の理解を得ることが今後の課題。釜池さんは「関心がある人だけの活動から地域全体の取り組みになれば」と展望を語る。貧困や孤食、だんらんの素晴らしさ、独居老人への利用呼び掛けなど取り組み方や目的にさまざまな特色が見られるこども食堂。継続し試行錯誤を続けることで地域を変える一つのツールになり得るはずだ。