宮崎市街地で行われたイベントで試作販売された魚うどん=15年12月26日、宮崎市・一番街

鮮魚や加工品で可能性 長期養殖のコスト補う

 超高級食材として脚光を浴び、販売から約2年半がたった「宮崎キャビア1983」。出荷量増大に伴い大量のチョウザメ魚肉が副産物として生み出されている。採卵後のチョウザメや卵を持たない雄の有効活用に取り組む業界の動きを追った。

 中国では高級魚として皇帝に献上されていたことから「皇帝魚」とも呼ばれるチョウザメ。美しい白身はくせがなく、淡泊な味わいで加熱すると鶏肉のような弾力のある食感が特徴だ。今までは採卵後の魚肉を生産者や加工場職員が持ち帰る程度。しかし、キャビア生産が本格化すると大量の魚肉を抱え始め、有効活用するために鮮魚販売や加工品を製造する動きが出てきた。また、雌雄の判別に約3年、雌の抱卵までに約10年も要するキャビア生産には膨大な時間とコストが掛かる。魚肉としての販売利益が出れば長期にわたる養殖のコストも補うことができる。

 日南チョウザメ養殖場(日南市富土・濱中章輔社長)のいけすではキャビアを抱卵した大きな雌のチョウザメと鮮魚販売用のチョウザメが悠々と泳ぐ。2、3年前から魚肉の加工品開発に着手し、薫製にした「チョウザメジャーキー」、すり身を麺にした「魚うどん」、切り身のフライなどを開発した。県内のイベント会場で行った試作販売での反応は上々。アンケート調査も行い、さらなる商品開発に余念がない。同社取締役の長友睦郎さん(75)は「『チョウザメといえば日南』といわれるように、名物商品を売り出したい」と力を込める。

 濱中社長が代表理事を務める宮崎キャビア事業協同組合(宮崎市・15人)ではチョウザメの特徴を生かしたレトルトカレーを開発、3月の発売を目指す。同組合営業主任の畠山健さん(38)は「加工品を手に取ることでチョウザメを身近に感じてほしい」と加工品に期待を込める。このほか、養殖業者が魚肉の煮込みの缶詰を水産加工会社と提携して開発するなど、活動は広がりを見せている。

 県内外に向けてチョウザメ魚肉を卸している宮崎活魚センター(宮崎市田代町)の築地加代子社長(47)は「チョウザメの魚肉には疲労回復に効果的な栄養価などが含まれており、プロスポーツ選手も注目するほど」と太鼓判を押す。キャビアの高級感が先行し、食用としては道半ばのチョウザメ魚肉。アイデア次第で販路を切り開き、新たな宮崎ブランドの仲間入りが果たせるか。可能性は十分あるはずだ。