「こんな貝やウニが採れたよ」。東京から初めて来たという子どもたちも自然に触れ大喜び

まるで南国の楽園 波穏やか、熱帯魚間近に

 瀬渡し船に乗ること1分、そこには真っ白な砂浜が広がり、澄んだ海にたくさんの熱帯魚が泳ぐ。日南市南郷町の栄松海水浴場沖にある孤島(こじま)は、海水浴やシュノーケリングなどのマリンレジャースポットだ。「ほかの人には教えたくないくらい」と長年通う利用客もいる。そんな穴場の魅力を探った。

 孤島は日南海岸国定公園内にあり、栄松海水浴場の沖合約100メートルに浮かぶ周囲約500メートルの無人島。島には亜熱帯性樹木が茂り「南国の楽園」の雰囲気が漂う。

 西側にある50メートルほどの砂浜はサンゴや貝のかけらでできており、さらさらとした感触。岩礁に囲まれ波は穏やかで、小さな子どもも安心して遊べる。海に潜ると、サンゴやクマノミ、ルリスズメダイ、チョウチョウウオなどの熱帯魚が間近に見られ、近くの外浦漁港を拠点にする水中観光船「マリンビューワーなんごう」の定期航路にもなっている。

 東側は風景が一変。波で削られた波状岩が続き、大島や七ツ八重を望みながらの磯釣りで人気という。

 栄松海水浴場から島に渡るには、瀬渡し船を利用すると便利だ。毎年、海水浴シーズンに合わせて営業。以前は4隻ほどあったが、現在2隻が運航する。砂浜に並ぶテントのうち、青い旗は父親の後を継いで12年になる時任美江子さん(67)の時福丸。すぐ隣の黄色い旗は川崎勝宜(63)、京子(63)さん夫婦の第一大漁丸。料金は往復大人500円、中学生300円、子ども200円。千円で周辺の小島遊覧にも応えてくれる。

 時任さんは幼いころから父親の漁を手伝っていたため船が大好きという。「おばちゃん、元気だった」となじみの客から声が掛かると「よく来たね」と笑顔を返し、ライフジャケットを客に着せ船を出した。利用客との交流が元気の源になっているようだ。

 島では県外リピーターの姿も目立つ。東京都多摩市から9年連続で家族と来ている貞松醇一郎さん(72)は「日南市の親戚に教えてもらって気に入った。タイのプーケットみたいな感じ。毎回潮だまりで貝を採るのが楽しみで、孫も喜んでいる」とビデオカメラを片手に南国気分を満喫していた。

 「皆、ごみをきちんと持って帰ってくれる。若い人たちもマナーがよく感心する」と第一大漁丸の川崎さん。そんな利用者の良心で「楽園」の環境は保たれているのだろう。自然の恵みは尊く、はかない…。そこを少しばかり借りていることを忘れずにいたい。