水しぶきに光りが差し込み虹が浮かび上がる

自然の四季に彩られ暮らし潤す郷土の宝

 勢いよく吹き上がる水煙、地を揺るがすごう音―。都城市関之尾町の関之尾滝は四季を通じ雄大な自然に親しめる景勝地だ。国の天然記念物の甌穴(おうけつ)が上流に広がり、春は桜、秋は紅葉が彩りを添える。豊かな水は田畑を潤し、滝は人々の暮らしを支える郷土のシンボルになっている。

 滝は霧島山系の湧き水が流れ込む大淀川支流・庄内川の一部。大滝、男滝、女滝が横に連なり、最も大きい大滝は幅40メートル、落差18メートルある。約34万年前にできた川床の溶結凝灰岩が、水流による浸食や崩壊を重ね形づくられたという。岩肌の雄々しさ、均等な姿は力強い印象を与える。

 1990年、日本の滝百選に選定。県内からはほかに真名井の滝(高千穂町)行縢の滝(延岡市)矢研の滝(都農町)が選ばれた。全国から一般公募(応募総数34万通)で527の滝が候補に挙がった際、関之尾滝は応募数で全国3番目だったという。当時、選定に尽力した元都城市商工観光課課長の海田勝海さん(73)=同市梅北町=は「アクセスが便利で、自然や甌穴など周辺環境がいい。応募数が多かったのは地元住民の郷土愛が強かったから」と目を細める。

 滝は住民の暮らしと密接につながる。農業用水の取水口があり、現在、三つの用水路で同市西部7町約600ヘクタールの水田を潤す。中でも前田用水路は1889(明治22)年、地元の坂元源兵衛が起工、引き継いだ前田正名や住民が一丸となり10年以上の歳月を費やし完成させた。

 関之尾町の農業坂元正孝さん(68)は「3代も4代も前から農業や生活用水として利用してきた宝。後世にしっかり残していかなければならない」と力を込める。

【メモ】関之尾滝周辺は、2010年7月の集中豪雨で大きな被害を受けた。現在もキャンプ場は一部使えない状態。つり橋の補強・復旧工事は近く始まる。関之尾緑の村TEL0986(37)2929。