三之宮峡に注ぐわき水を調べる清水洋一さん。真夏にもかかわらず水温は15度と冷たい
巨石に囲まれたふちに反響するごう音
ドドドドッ―。けたたましい滝音が巨石に囲まれたふちに響く。小林市の三之宮峡にある滝「櫓の轟(やぐらのとどろ)」は、その規模からは想像できないような水音で訪れる人々を魅了する。滝つぼからは水煙が立ち上り、涼感もたっぷりだ。大淀川支流の岩瀬川流域にあり、落差はおよそ7メートル。自然のダムがせき止めた川の水は、急激に狭くなる川幅で水圧を増し、勢いよく水しぶきを上げて落下する。
34万年前の加久藤火砕流が浸食された峡谷には、溶岩が冷やされてできた柱状節理の壁がそそり立つ。腹の底に響くごう音は、そんな悠久の自然がつくり出している。宮崎市の地質研究家青山尚友さん(64)は「きれいな断面の巨石がコンサートホールの天井のように立ち並んでいる。反響し合うことで迫力がある音になる」と説明する。
北きりしま田舎物語推進協議会の清水洋一会長(64)は「昔は滝つぼの下流でウナギをたくさん取ったものです」と青年時代を振り返る。三之宮峡のガイドを務め清掃活動にも率先して取り組む。「渓谷を歩くと野鳥の声や虫、カエルたちの合唱などさまざまな音に癒やされる。ここで過ごすぜいたくな時間を多くの人に知ってほしい」と願っている。
【メモ】櫓の轟は三之宮峡入り口から歩いて約10分。遊歩道はかつて、木材や炭などを搬出したトロッコ道跡で全長約1キロ。手掘りのトンネルや奇岩が点在する。小林市観光協会TEL0984(22)8684