親子で仲むつまじく草をはむ岬馬。110頭の馬が「岬の顔」として来訪者を出迎える
海岸線に野生馬、大自然がつくる美しさ
果てしなく広がる紺ぺきの太平洋に、複雑に入り組んだ海岸線の大パノラマ―。本県最南端に位置する串間市・都井岬は、大自然がつくり上げた造形美を間近に感じるスポットだ。岬の顔は110頭の野生馬。江戸時代に高鍋藩が軍用馬として放牧飼育、その後半野生化し、生息し続けている。岬の入り口「駒止の門」にほど近い小松ケ丘には、春の訪れとともに多くの馬が集まる。生まれたばかりの春駒を連れ黙々と草をはむ姿は愛くるしく、観光客も目を細める。
岬一帯は1953(昭和28)年、繁殖地として天然記念物に指定された。周辺は学術的に貴重な植物が多く、絶滅危惧種のオキナグサ(キンポウゲ科)はその一つ。全体が白毛に覆われて、毎年春に紅色の花を咲かせる。「毒を含む植物なので馬が食べることはない。共存しているんです」と岬のガイドを務める三好久美子さん(53)は話す。
のどかな丘陵地帯から一変、岬の東端の御崎神社周辺は3千本ものソテツが自生し、南国チックな雰囲気が漂う。遊歩道を進むと、そこはまるでジャングル。探検隊の一員になったように胸が躍り、隠れた見どころとなっている。
かつて日南海岸の名所として、多くの新婚旅行客でにぎわった岬。近年は集客に伸び悩み、昨年2月には中核のホテルが閉館した。
串間市観光協会は昨年夏、ホテル内に観光案内所をオープン。案内看板や遊歩道の整備、無料ガイドなど、新たな集客活動が進む。「たくさんの人に岬の魅力を存分に分かってもらいたい」と都井岬観光案内所の原田天所長(58)。岬観光は再生へ着実に動き始めている。
【メモ】春駒シーズンを迎え、かわいらしい子馬に出会える。観光案内所で販売しているトロピカルジャムのソフトクリームが好評。有料で乗馬体験もできる。TEL0987(76)1230。