スタッフ、ボランティアが利用者とひとつのテーブルを囲む。和やかな雰囲気にはしが進む

作り手の思い凝縮 触れ合い通じ元気に

 一人暮らしのお年寄りや老夫婦世帯が増え、高齢者の食を取り巻く環境が変化している。「体力が衰え、料理ができない。買い物に行けない」「栄養の偏りが気になる」―。そんな不安の声を打ち消そうと、配食サービスや定期的な昼食会など、高齢者の食を支える事業が広がっている。

 延岡市富美山町の杉の子保育園(木本宗雄園長、108人)は約20年前、昼食の配食サービスを始めた。園の給食をアレンジし、栄養バランスを考えた献立。現在、平日の週5日、周辺約10軒に配っている。近隣に限っているのは「みそ汁の冷めない距離」との配慮からだ。

 配達には園児が付いて行く。「こんにちはー。お弁当を持ってきました」。玄関先に元気な声が響く。かわいい小さな手からほかほかの弁当を受け取ると皆、顔をほころばせる。一人暮らしの工藤フミさん(82)は「子どもとの触れ合いが楽しみ。何よりも元気が出るんですよ」と、この瞬間を心待ちにする。

 木本園長の妻愛子さん(69)が書く添え文も人気だ。「入院されていたおばあちゃんが退院されました。うれしく思います」季節の話題や日常の出来事を織り込んだ手紙は5千枚に上る。「何を書こうか悩む日もある。でも、宝物と言ってもらえたり、返事をくれたりと反応があり、やめられない」

 ホームホスピス宮崎(市原美穂理事長、20人)が宮崎市恒久で運営するケアサロン恒久では、80歳の食事ボランティアが働く。約30年間、病院やレストランで賄い食作りの経験がある同市赤江の今村澄子さんだ。「私もいつ利用者になるか分からんけど、体が動く限り頑張るわあ」。調理の手際の良さ、パワフルさは年齢を感じさせない。

 メニューは豊富。高齢者はあっさりした食事を好む印象だが、とんかつやチキン南蛮など高カロリー食も好評という。今村さんは利用者と食卓を囲み、それぞれの好みの把握を欠かさない。「小さく刻んだ方がいいかも」「味付けが濃かったかな」と研究熱心。小さな施設のため、できる限り要望に応えている。

 利用者の井上久子さん(90)は「家庭の味が気に入っている。おしゃべりしながらみんなで食べるのが好きなの」。そんなアットホームな雰囲気が食欲を刺激したのか、サロンに通い始めて2年で体重は2キロも増えた。

 作り手の「おいしく食べてほしい」という願いがうまみとしてぎゅっと詰まった、心温まる食事こそがお年寄りの元気の源と感じた。(写真部・西村公美)