【評】水面がさまざまな暖色系に分かれ、黒潮の新しい表情が見える。光る航跡を作る黒く小さな船影が、黄金色の画面を引き締めている。大海原を全速力で帰る漁船を見ると、海を相手に闘う漁師と、あるじを待つ家族の関係まで想像が膨らむ。色彩の魔術師といわれた写真家の故緑川洋一氏は、地元の瀬戸内海を撮り続け多くの写真集を出し高い評価を得た。海は表情が豊かで、いいモチーフになる。(写真部次長 沼口啓美)