施術室に並ぶ楽器。側面にびょうを打ち込んだり西洋楽器のように糸巻きを付けたりするなど独自にアレンジしている
音のうねりに魅せられて 情熱高まり本場で修業
ジエリ、ドゥンドゥン、ドンソ…。齊藤剛さん(60)=宮崎市新別府町=が手掛けたこれらの逸品が好評だ。どうやら、新種のスイーツではないらしい。バラフォン、カリンバ、ジャンベ…。ピンと来た方もいるだろう。そう、正解はアフリカ楽器で齊藤さんは製作者。演奏家でもある。宮崎市出身。元々音楽好きで、高校時代はバンドでドラムを担当し、当時の音楽コンテストの王道「ポプコン」九州大会に県代表として出場するほどの腕前だった。卒業後は同市内で10年ほど会社勤めをした後、実家のちりめんじゃこ製造業を継ぎ、35年ほど生業としていた。多忙でしばらく音楽から離れていたが、20年ほど前に耳にした複雑で独特なアフリカ音楽が琴線に触れ、音楽熱が再燃する。
愛好家と交流するうちにいっそう興味が募り、2005年に西アフリカ・マリを訪れるまでに。路上などで日常的に演奏が繰り広げられていて「音のうねりに感動した」。マリにはこれまで5度、いずれも数カ月滞在し、現地のバンバラ語と公用語のフランス語を習得した。
奏法を学ぶ中で楽器作りにも興味を抱き、製作者宅に身を寄せて技法を学んだ。アフリカ楽器は素朴な音色が特徴で、木や動物の皮など身近な素材で作られている。齊藤さんの作品も同様で、現地滞在時はプロ演奏家から注文を受けるほど高い評価を受けた。
2年前に家業を娘夫婦に任せ、腱(けん)引き療法所を営む。アフリカ音楽が流れる施術スペースには、自作の楽器がずらり。「優しい音色と緻密なリズムが病みつきになる」と、新たな刺激を求めて6回目の渡航を計画している。情熱は本物だ。