会員が持つ道具箱には工具のほか、手作りの測定器やおもちゃの部品などが100種以上詰まっている=宮崎市

壊れた「宝物」に命再び 子どもの笑顔 原動力

 「直せますか?」。宮崎市・檍中2年の柳本海翔(かいと)さん(14)が壊れたバスのミニカー4台を持ち込んできた。同市内で今月中旬に開かれたおもちゃ病院での一こま。幼いきょうだいが踏んでしまったらしい。男性スタッフは「大丈夫」と力強く請け合い、3台は数十分で元通りに。「宝物が戻ってきた」。柳本さんは大事そうに受け取ると、とびきりの笑顔を見せた。

 玩具の修理や工作教室などを手掛けるボランティア団体「おもちゃ病院みやざき」(壹岐英勝代表、宮崎市)が設立20周年を迎えた。主に県央部で活動し、工作教室など1年に約230回のイベントを開催。年間約1500個のおもちゃを“手術”し、子どもたちを喜ばせてきた。会員は41人。活動の中心を担うのは高齢者で、平均年齢は69歳だ。

 1998年に幼い子どもを持つ父親らを中心に活動を始め、翌99年に正式に設立した。会員は電機メーカーや整備技術者、公務員OBなど。現役時代に高い技術力を身に付けていて、今では熟達の「おもちゃドクター」として活躍している。

 主に親子連れが多い公共施設が会場となるおもちゃ病院。県立図書館で開かれた際には5人のおもちゃドクターが参加した。修理の様子をうかがっていた柳本さん。たまたま持ち歩いていたミニカーを差し出した。おもちゃドクター3人が目を凝らして故障箇所を観察。「持っている部品が使える」と工具箱を取り出し、順調に修理を進める。柳本さんは「もうどうしようもないと思っていたのに」と感謝していた。

 簡単に修理できないおもちゃは自宅に持ち帰ることも。事務局長の高橋利信さん(69)=宮崎市小松台東3丁目=は、1カ月前から動くぬいぐるみを修復中。自室の作業スペースで5時間ほど通して机に向かうこともある。「依頼者からの『ありがとう』という言葉が何よりの原動力」と作業に打ち込む日々を送る。
 「高齢者を社会活動に促す役割も果たしている」と壹岐代表(76)。実際、会員は生き生きと活動している。最高齢の後藤俊一さん(91)=同市昭和町=もその一人。「誰かに頼られることをしたい」と16年前に参加。今ではラジコンカーの電子部品の修理もやすやすとこなす。「どこが悪いのか考えることで認知症予防にもなる。生きがいです」と目を輝かせた。

 「会員がもっと地域と関わるきっかけづくりをしたい」と語る壹岐代表。おもちゃ病院の活動を通して、子育て世代への協力も目指したい考えだ。「高齢者、若者、子どもが笑顔でいられる場を提供していきたい」と力を込めた。