初水揚げからひと月。忙しそうに魚を仕分ける従業員たち=3月

準備重ね初水揚げ 港に力

 「おーい、いいぞ」。海の男たちが掛け声とともに縄をたぐり寄せていく。次第に魚影が浮かび上がり、アジ、サバ、サワラなどの海の幸が網の中から顔を出した。宮崎市の内海港沖に設置された大型定置網で2月上旬、初水揚げが行われた。この定置網は県漁連(宇戸田定信会長)と同市漁協(矢部廣一組合長)によって設立された「県漁業販売株式会社」が、沿岸漁業の雇用創出や不漁対策、観光資源としての活用を目指して昨年11月から準備を進めてきた。新たな振興策に取り組む漁業の現場をカメラで追った。

 定置網漁は漁場が近く、一年中安定した漁獲が見込める漁法で、回遊する魚を誘い込む網とその魚を取る網からできている。県内では16年ぶりの設置となった定置網は「二段箱式網型」。同港から約10分の沖合にあり、長さ約750メートル、幅約250メートル、水深33メートル。堀切峠から黄色い「フロート」が見え、網の大きさが確認できる。

 昨年末、同港の船着き場に足を運ぶと約1万6千個の「土俵」が山のように積まれていた。網が流れないように海底に沈めるもので、一つ約50キロにもなるという。冷たい風が吹く中、袋の口を縛る作業を黙々と進める従業員の日高良一さん(52)は「気が遠くなる。この作業は年明けまでかかるね」と苦笑い。

 網打ち作業は年明けに始まった。漁船に載せた大量のフロートを海に投げ込むと、徐々に定置網の輪郭が現れてきた。「ゆっくり、ゆっくり」「はい、引っ張って」と威勢の良い掛け声は、網の設計から設置までを請け負う日東製網(本社・東京)の岩切勝之さん(45)。危険を伴う作業のため船上では常に声が飛び交っていた。網が大きく、悪天候も影響し作業は難航。予定の1カ月遅れで2月上旬に完成した。

 いよいよ迎えた初水揚げの日、6人の従業員や関係者たちは緊張の面持ちで漁に臨んだ。「揚げてみらんと何が入っちょるか分からんわ」と日高さん。試験操業を兼ねた漁だったため4時間ほどかかり、漁獲も60キロと少なかったが、漁労長の高橋孝夫さん(51)は「ひとまずホッとした。あとは作業に慣れて安定した漁をしたい」と安心しつつも気を引き締めた。

 現在はほぼ毎日操業しており、船が戻るのを楽しみに待つ地元住民も多い。同港の近くに住む泉京子さん(75)は「以前と比べて雰囲気が変わった。魚がたくさん入ってくると自分のことのようにうれしい」と生き生きした様子で話す。内海港に往年の活気が戻ってきた。