睡眠時に呼吸を助けるCPAP。はじめは慣れが必要だが、目覚めの爽快感を体験すると手放せなくなる
自覚なく昼間に眠気 生活習慣改善で効果も
睡眠時無呼吸症候群(SAS)―。この聞き慣れない病気は、2003年2月に山陽新幹線で発生した居眠り運転問題で一気に注目された。アメリカではスペースシャトルチャレンジャー爆発事故や、スリーマイル原発事故も睡眠障害が一因と報告されている。記者自身も今年3月、SASと診断を受けた。取材途中に起こした居眠り運転事故がきっかけだった。本人が気づかないまま発症している可能性もあり、潜在的な患者数が多いとみられる睡眠障害の周辺を探ってみた。
主治医の谷山ゆかり・潤和会記念病院睡眠外来医(36)は、SASについて「睡眠時に何度も呼吸が止まった状態(無呼吸)や止まりかける状態(低呼吸)が繰り返される病気。その結果、睡眠が妨げられ昼間の眠気を引き起こす。また低酸素血症を繰り返すことで高血圧、心筋梗塞、脳卒中など合併症のリスクが高くなる、放っておくと生命に危険が及ぶ」と説明。
症状としては「いびき、日中の眠気や倦怠(けんたい)感、不眠・中途覚醒、起床時の頭痛・頭重感、夜間頻尿を引き起こす」と付け加えた。
記者の場合は症状が顕著なため、原因、重症度を判断するのに簡易検査ではなく、より詳細な呼吸状態や睡眠状態のデータを得られる終夜睡眠ポリソムノグラフィ検査(PSG)を用いた。検査は痛みを伴うことはなく1泊入院して行う。全身にセンサーを装着し、脳波と心電図、胸部・腹部の呼吸運動、鼻からの空気の流れ、動脈中の酸素の量、手足の動きを記録しながら就寝する。
結果は項目ごとにグラフ化され睡眠の質を目で確認でき、睡眠時の状態が分かっただけでも有意義な検査となった。
藤本かおり・市民の森病院呼吸器科医(40)は「患者は年々増加していて、県内約350人の治療に当たっている。受診者は中高年男性が多く、肥満だけでなく深酒など生活習慣も関係している」と要因を挙げる。
現在有効な治療薬はないが、生活習慣の是正とともに呼吸を助ける経鼻的持続陽圧呼吸療法装置(CPAP)を使った在宅医療が最も有効とされている。
宮崎市のある会社員(48)はCPAP治療を受けて5年目。「以前と比べ脳が目覚めた感じ、人生が変わった」と治療の効果を強調。記者もかつて眠れない夜に苦しんだがCPAP治療後はかなり改善されたと実感している。
今回取材を進めるうち、SASについて一般にはまだまだ認識が浅いと知らされた。
重大な事故につながる危険性や自らの生命にも危機を及ぼすSASは、自覚の得にくい病。社会的関心の高揚の必要性を強く感じた。