柱と食器棚を金具で固定した河野さん。家具の転倒を防ぐことが、屋内での避難経路の確保につながる

地域実情応じて対策 危機管理意識を啓発

 町をのみ込む大津波、避難所にひしめく被災者たち―。東日本大震災は東海・東南海地震の発生が懸念される本県にも衝撃を与えた。約400キロにわたる本県の日向灘沿岸も決してよそ事ではない。リアス式海岸があり平野がありと、地形や年齢構成など地域の実情に応じた対策が求められる。そんな地域防災の要が自主防災組織。組織率7割を超える宮崎市で2地区の取り組みをカメラで追った。

 山が差し迫り、海沿いに民家や商店が並ぶ内海地区(510世帯)。14の自主防災組織でつくる同地区自主防災連合隊は震災後、津波の避難場所の選定を進めている。大人数を収容できる内海小はあるが、海抜2・9メートルと低く、高台の避難所確保は急務だ。

 同連合隊隊長の原田清さん(79)らは既に6カ所の避難路や広場の安全性などを点検。「この坂は年寄りはよう上がらん」「草を刈れば足元は大丈夫じゃ」。住民の半数を65歳以上が占めるため、高齢者の視点を欠かさない。

 「お年寄りが多いからこそ綿密な計画が必要」と原田さん。2年前に建てた海抜標柱を示した地図を作って各家庭に配り、普段から危機管理意識を持って生活してほしいと願っている。

 県総合運動公園に近い島山地区(173世帯)は1662(寛文2)年の外所地震で津波被害に遭った。15人が死亡したといわれる。毎年、地震のあった9月に「防災の日」を設け避難訓練や勉強会などを行い、住民の防災意識は高い。その中心が看護師や自衛隊OBなど18人で組織する自主防災隊。震災を受けて今月8日、消防団とともに防災対策会議を開き、災害時要援護者世帯の再確認や避難時の連絡体制など避難計画の練り直しを話し合った。

 各家庭の非常用持ち出し袋も点検した。市消防職員として岩手県陸前高田市に派遣された長友睦さん(37)が、水や食料不足に苦しむ被災者を見て「避難後の生活を頭に入れておくべきだ」と提案した。隊員らは16日、各家庭を回って袋の中身を確認し「簡易浄水器を持っていると便利」などとアドバイスした。

 住民の河野均さん(75)は食器棚を固定する金具を設置。「家が古いから、自分でできる耐震はしちょかんといかん」と震災翌日に買いに走ったという。

 両地区とも津波避難タワーの設置を市に求めているが、多くの住民が「地域でできることはまず自分たちでせんと。近所で助け合えば災害に立ち向かえる」と口にする。行政頼りではない自助、共助の意識が災害に強い町づくりの源だと感じた。