浸食の過程などを調査する地質研究家の青山尚友さん
表情さまざま天然のオブジェ
岩場に突き出た大小の突起が、異様な海辺の景観をつくり出している。日南市鵜戸崎の奇岩群。長い年月を経て形成された天然のオブジェは、眺める角度や時間帯でさまざまに表情を変え、見る者を魅了する。断崖の洞窟に本殿を持つ鵜戸神宮があることでも知られる鵜戸崎。約640万年前の分厚い砂岩層が岬を形づくり、奇岩が連なる海岸線は鵜戸埼灯台から北へ約1キロにわたって延びる。
滑らかな岩肌から飛び出した団塊は、どのような過程で出来上がったのか。宮崎市の地質研究家青山尚友さん(65)によると、堆積した砂の表層部が海水の動きでいくつもの渦を巻くことで生まれたという。炭酸カルシウム(貝殻の主成分)や鉄分が濃縮された砂が渦によって球状に固まり、その後、地層が隆起して柔らかい部分だけが浸食されるというメカニズムだ。
鉄分を含む突起は酸化して赤さび色になり、さらに強度を増した。青山さんは「人工では決してつくり出せない形や曲線はまさに芸術品。規模が大きく奇岩の種類が豊富なので、いつまで見ていても飽きない」と話す。
県内最大の奇岩群とはいえ、釣り客を見掛けるばかりで観光地化は進んでいない。鵜戸区の地域おこしグループ・鵜戸山をかっとしやる協議会の長友治会長(70)は「子どもの時から岩によじ登ったりテングサを取ったりして遊んでいた。人に教えたくない秘密の場所だよ」と冗談交じりに笑う。今年は案内看板設置や遊歩道整備を進める考えで「鵜戸さん参りをしたら、少し足を延ばしてみて」と目を細めた。
【メモ】鵜戸埼灯台下からの眺めがお薦め。鵜戸神宮第2駐車場から灯台まで約250メートル。灯台脇の石段を下り徒歩2分。波打ち際は高波が来るため注意が必要。鵜戸山をかっとしやる協議会・長友会長TEL0987(29)1327。
※宮崎海上保安部は鵜戸崎の灯台を「鵜戸埼灯台」と表記