繁華街にある指定喫煙所。愛煙家はマナーを守り市民の理解を得ることが求められる
“逆境”の中でも一服 マナー守って共存を
過去最大のたばこ税増税が実施され、間もなく1カ月。平均115円の大幅値上げが喫煙者に重くのしかかる。2003年施行された健康増進法以来、高まる禁煙ムード。たばこを取り巻く環境は様変わりしつつある。「パパたばこやめてね」。印象的なフレーズとともに、宮崎市のミドリ薬品柳丸新店には禁煙グッズがずらりと並ぶ。ガムや電子たばこなど8種類。たばこが値上げされた今月1日以降、売れ行きを伸ばし、売り上げは今年8月比で2・5倍に迫る勢いだ。「人気商品は体に張るパッチタイプ。メーカーの生産が追いつかず、品切れ中のものもある」と池田大介店長(37)は驚きを隠さない。
県内に8店舗を構える焼き肉店「夾竹園」(阿渡萬七会長)は、今月8日から全店舗を店内全面禁煙にした。健康志向の高まりもあり、今回の値上げをきっかけに実施に踏み切った。「食後の一服を楽しみにするお客さまが離れてしまう不安はあったが、快く協力してもらっている」と統括本部長の阿渡真美さん(49)は自信を持つ。
喫煙場所が制限され、肩身の狭い思いをする愛煙家は少なくない。宮崎市田野町のパート従業員仕垣敦子さん(51)は1日から禁煙。その悩みから解放された。「喫煙所を探す煩わしさがなくなり、ストレスがたまらない。一緒に出掛ける家族に迷惑を掛けることもない」とさばさばした表情を見せる。
一方、これまで通りたばこを楽しむグループもいる。宮崎市神宮東2丁目の「サンランド」(重永恭英店長)は国内外の豊富なたばこをそろえる専門店。そこに毎月第3土曜日に集まるのが愛煙家の会「紫煙倶楽部」のメンバーたち。20〜80代の三十数人が入っており、紫煙をくゆらせ、世代を超えて交流を深めている。
「値上げ後も禁煙を考えたことはない」と口をそろえる。だが、やはり気になるのはお財布事情。増税前のまとめ買い以外にもそれぞれが知恵を絞ってたばこを楽しむ。「1カ月3カートンほど吸っていたが、吸うタイミングや場所を制限し2カートンほどに抑えようとしている」と宮崎市下北方の飲食店員富永吉宣さん(25)。吸い殻をほぐし、手巻きしたりパイプに詰めたりして再利用するメンバーもいるという。
周囲から禁煙を勧められる機会が増え「つらい時代の到来かも」とつぶやきも漏れる。「最低限のマナーは守る。喫煙、嫌煙者それぞれが納得し、共存できる社会を望んでいるのだが…」