ドリルで穴を空ける。この後、木づちでぶち抜いてスネアドラムの原型が出来上がる
堀内誠さん(57)=三股町 趣味高じて製作者に
「55歳になったら、大好きな音楽を仕事にしたい」-。そう描いていた長年の夢を言葉通りにかなえたのは、三股町宮村のドラム製作者堀内誠さん(57)だ。輪切りにした木材をくりぬいてスネアドラム(小太鼓)をオーダーメード。素材の生かし方や音を徹底的に追求、独自製法も駆使して作っている。こだわり抜いた楽器の評価は高く、国内外からの注文も着実に増加。2024年はさらに世界へ羽ばたこうとしている。吹奏楽部に所属していた三股中時代にドラムと出合った。都城工業高に進学後はいっそうのめり込み、初めて自分なりに改造も。県外に進んだ大学では軽音学部で活動すると同時に、社会人のジャズバンドにも参加して精力的に演奏。「ドラム漬け」の日々だった。
家業の工務店を継ぐため、27歳で帰郷。県内外のライブにジャズドラム奏者として出演するなど音楽活動を続けながら、仕事中心の生活を送ってきた。その間も音楽への情熱は募るばかり。45歳になると夢の実現に向け「55歳を区切り」と漠然と考えるようになった。
試しに作ったスネアドラムの評判が良かった。「気を良くして何個か作っていたら、いつの間にかドラムメーカー『Mdrums』を21年に立ち上げることになった」と笑う。今ではドラム製作が仕事の中心だ。
ドラムにはこだわりが詰め込まれている。胴の部分は薄い板を何枚も重ねて熱や蒸気で曲げて成形するのが一般的だが、「木にストレスを与えたくない」と輪切りにした木材をすぽんとくりぬいて製作する。音も理想を求めて妥協しない。強度を保ちながら木ならではの自然な音が出せるよう、胴回りに工夫を凝らす独自の製法を確立した。
近くでドラム教室を営む上之園謙治さん(68)は、堀内さんが作ったドラムを愛用。「スティックでたたいた感覚が柔らかい。木そのものから音が出ているようで、見た目も美しい」と絶賛する。
注文が国内外から寄せられていることに「うれしいこと。今が青春」とはにかむ堀内さん。今後はドラムセットも販売予定で「イマジネーションが湧くような楽器を作りたい。県産材を使っていることもアピールできれば」と意欲は尽きない。