和気あいあいとした雰囲気で練習するクラブのメンバー

競技人口増へ次世代育成 宮崎ジュニアカヌークラブ(宮崎市)

 宮崎は全国トップクラスのカヌー強豪県だ。全国高校総体や国体では何度も日本一や入賞を獲得してきたが、いまだ競技人口は少ない。カヌーの面白さを広め、そんな現状を変えようと、現役を退いた若者たちが宮崎ジュニアカヌークラブ(宮崎市)を立ち上げて5年。練習拠点の大淀川では、歓声を上げ、慣れない手つきでパドルを操る子どもたちの姿が少しずつだが増えてきた。

 「落ちるなー。頑張れ」。10月半ばの日曜日。宮崎市・宮崎商業高近くの河川敷に小学生の甲高い声が響いた。クラブに入って3カ月の生目小3年、中村心優(みゆ)さん(9)の乗るカヌーが、左右にふらつきながら岸から遠ざかる。10メートルほど進むとぎこちないパドルさばきで反転、岸までたどり着く。「初めて落ちずに戻れたね!」。同クラブ代表でコーチの石川佳奈芽さん(24)が手をたたいて喜んだ。

 小学生7人、中学生2人が所属。4人のコーチは全員が20代で、いずれも宮崎商業、宮崎大宮高カヌー部出身。現役時代は全国高校総体や国体のスプリント競技で上位に輝いた実力者たちだ。

 発足は2013年。石川さんが大学1年の時に「カヌーの楽しさを広めたい」と考えたのがきっかけ。同級生や後輩に声を掛けて指導者を集めたり、機材を使わせてもらおうと高校時代の顧問に協力をお願いしたり…。ジュニアチームの立ち上げに奔走した。

 国内ではメジャー競技とは言えないだけに、当初集まったのは3人。それも石川さんの弟やその友人たち。それでも指導の傍ら、体験会を開いて地道に魅力を伝え続けてきた。

 加納小6年の浮田史道(しどう)君(11)も一度体験し、「川を進む感じが気持ちいい」と1年前に入部。広瀬西小6年の厚地(あつち)康成(こうせい)君(12)は「大淀川で高校生が乗るカヌーを眺めて気になった」と10月から本格的に練習に参加する。

 「ようやく形になってきた」。コーチの1人、村田優之(まさゆき)さん(24)は輪の広がりを実感する。練習は週5日。休日や終業後と、コーチ陣は時間を削って携わる。それでも子どもたちがカヌーに親しむ姿に「やりがいを感じる」。

 本県のカヌースプリント競技は、約20年前に県外から指導者を招いててこ入れ。10年ほど前から国体や全国高校総体で頭角を現し始めた。以来、県外からの合宿も相次ぎ、強豪県ならではのメリットも生まれた。競技人口の裾野を広げ、競技力を底上げするには、ジュニア世代の育成が鍵。石川さんは「カヌーの認知度を高め、日本一の選手を育てたい」と力を込める。