講習では視野検査、夜間視力などを測定。見えている「つもり」だったことに気づかされることもある=宮崎市・本郷の宮崎ドライビングスクール

切り離せない日常の足 「講習」で技術再点検

 公共交通機関が充実している大都市と比べ、本県では県民の移動手段として自動車の果たす役割は大きい。利用頻度が高いだけに事故には十分注意したいが、県警の調べによると昨年は1万458件の人身事故が発生。特に高齢者は交通事故死者に占める割合が高い。高齢運転者数は増加傾向にあり、関係機関は免許更新時の安全講習など事故防止に向け、力を入れている。

 運転免許証の更新手続きは免許センターか、センターのない地域では警察署でも受け付ける。更新時に70歳以上の人の場合は手順が加わり、手続き以外に、法令に基づいた「高齢者講習」の受講が必要となる。

 講習は各自動車学校で開いている。同市本郷の宮崎ドライビングスクール(杉山勝朗校長)にも連日、受講者が来校。視野の広さや視力の検査、実車による技術確認、ディスカッションなどを通じ、日頃の運転を再点検する機会となる。宮崎市熊野の井上初代さん(74)は「注意力や視力が衰えてきている。講習で気づかされたことを日頃から意識して運転したい」と気を引き締める。

 また、運転免許を更新せず返納することで、事故防止に一役買おうとする人も多い。各種メリット制度による支援の動きも活発だ。

 一方、県内では一部の山間地など、車と暮らしが切り離せない状態を余儀なくされている地域がある。木城町中之又の黒木卯吉さん(92)は週数回、軽トラを運転し、1時間かけて町中心部や高鍋町などに買い物に行く。黒木さんは「ここはバスも通らず、免許返納は考えられない」と話しながら荷台に農具を積み込んでいた。

 昨年の県内高齢運転者は約18万人で、ここ数年毎年1万人ペースで増えている。高齢者の事故防止対策は、今後さらに重要度を増していく。安全運転意識の啓発など、地道な取り組みが必ず実を結ぶと信じている。