【評】漆黒に包まれた世界が静かに終わろうとしている。サクラは獣人の血で色づくとか、生き血で成長するなど多くの逸話がある。美しいサクラを愛する日本人は、狂気や残虐性までそこに潜ませる。血の色にも似た空と相まって、放射状に広がった黒いサクラには鬼気迫るものがある。昨春は光が満ちる「春の小川」で入選。今回は朝焼けの春。共通するのは被写体に委ねず、自分の世界まで対象を昇華させる姿勢。(写真部次長 沼口啓美)