ハチノス状に無数の穴が開いた岩。形成理由は、塩類風化など諸説あるようだ=7日午前11時、宮崎市青島
悠久の時が生んだ波状岩という造形美
真夏の太陽が沈んだ宮崎市の青島。月明かりが照らす漆黒の海岸に、幾重にも波を打つ岩のシルエットが浮かび上がる。その独特の形状から「鬼の洗濯板」と呼ばれる波状岩は、朝昼夜とさまざまに表情を変える。日向神話「海幸山幸」の舞台である青島は、亜熱帯植物が自生する周囲860メートルの島。島内には神社があり、年間約70万人の観光客でにぎわう。島を取り囲む波状岩は1934(昭和9)年「青島の隆起海床と奇形波蝕痕」として国の天然記念物に指定されている。
県総合博物館によると、波状岩は700万年から600万年前に砂岩と泥岩が何重にも積み重なった地層(宮崎層群)。地殻変動で九州島が隆起した際、海岸付近に約20度の傾斜ができ、柔らかい泥岩部のみが侵食され、波状形になったという。同博物館学芸課の赤崎広志副主幹(地質担当)は「隆起や風化、波による侵食などが絶妙のタイミングで起きた」と話す。
岩場を散策すると、ハチノス状やキノコの形、甌穴(おうけつ)などと変化に富んだ岩が目に入る。そんな自然の力と偶然の産物は、海辺の生物の格好のすみかだ。潮の満ち引きに合わせ、無数の穴からカニや貝が顔をのぞかせる。
観光で訪れた熊本県菊陽町の会社員近藤梓さん(25)は「遠くから見るとゴツゴツと荒々しい。でも、岩の上を歩くと、とても滑らかで柔らかい。気の遠くなるような年月を感じます」。自然の造形美を目の当たりにして悠久の時に思いをはせた。
【メモ】「鬼の洗濯板」か「鬼の洗濯岩」か―。波状岩の呼称について県は2007年9月、観光PRに限って「洗濯板」に統一した。一方、地質・地形学では「洗濯岩」を使用することが多い。