正面玄関前の車寄せは、国会議事堂と同じ桜御影石が使われている

完成から90年 歴史の重み随所に

 「94年前の1928(昭和3)年、鹿児島県との分離再置県50年の記念事業として建設計画が持ち上がりましたが、景気が悪く、立ち消えに。県民の熱意もあって3年後に着工にこぎ着け、1年4カ月をかけて完成しました」

 「当時の総工費は72万円。今の価値では50億円とも言われています。地下1階、地上3階建ての鉄筋コンクリート造りで、当時としてはかなり巨大な建物だったらしいですよ。2007年に始まった『県庁見学ツアー』参加者がいますね。一緒に行きましょう」

 ―同行し県庁前広場へ。

 「正面玄関前で立ち止まってください。こちらが広島県産の桜御影石で造られた車寄せです。国会議事堂も同じ石で建てられているため、『議院石』と呼ばれています。次は建物の紹介をしましょう」

 ―庁舎に入る。

 「正面階段の手すりをご覧ください。五ケ瀬町の祇園(ぎおん)山で採れた大理石でつくられています。この山は海底にあったというだけあって、サンゴなどの化石が交じっているんですよ」

 「当時、いかに最先端の施設だったかをお話ししましょう。水洗トイレやエレベーターを備えていました。全館を暖かくできる集中暖房設備も完備。今も内庭にそびえる高さ32メートルの大煙突がその名残です」

 ―北階段の踊り場へ。

 「上を見てください。船窓を思わせる直径約50センチの円形ステンドグラスです。全部で8カ所にあり、3カ所は自由に見られます」

 ―階段を下りて講堂へ。

 「こちらは1961(昭和36)年まで県議会議場として使われ、シャンデリアや天井の意匠が格調高い雰囲気ですね。議場を見下ろせるように設けた傍聴席も残っています」

 ―外に出る。

 「いかがでしたか。ツアー参加者も満足したようですね。さて、庁舎は2008年に宮崎市の景観重要建造物、17年には国の有形文化財に登録されました。昭和の建築物が姿を消す中で、県庁本館の価値は非常に高いのです」