西米良村小川の県道沿いにある地蔵はかつて地中から掘り出されたもの。いまでも住民の供え物が絶えない

夕日を思わすオレンジ色

 鮮やかなオレンジ色は、山に落ちる夕日を連想させる。この時期の風物詩ホオズキの収穫がはじまった。県内最大規模を誇り、先駆的に栽培に取り組む日之影町でも良品を選ぶ作業が丁寧に続けられている。

 県発行の「宮崎の花2013」によると、12年の県内では山間部を中心に計502アールに作付けされ、関東、近畿、九州各県にお盆の墓花や飾りとして約29万本出荷。県内向けはこのうち20%を占める。

 町内では1970(昭和45)年ごろ、同町七折の阿下集落から栽培が広まった。同集落の特徴でもある水車小屋を背景に収穫に追われていた河野一郎さん(72)は「大切に育てている。出荷するときは嫁に出すような気持ち」とほほ笑んだ。

 毎年7月、東京六本木の朝日神社で開く「ほおずき市」には同町産がずらり並ぶ。今年は10周年を記念して日之影神楽の特別公演もあり、好評を博した。販売拡大に加え、都市部との交流にも役立っている。

 同じく生産地で知られる西米良村でも地域おこしの目玉として、ホオズキにLEDを入れて作る「小灯し」に早くから着目。

 小灯しを制作する同村村所の黒木敬介さん(66)は依頼を受けると、制作体験教室を開く。「毎年、200個分は教えている」と話し、交流人口拡大に期待する。

 同村小川の永友和枝さん(64)宅の裏庭には在来種のホオズキが色づいている。永友さんは「シカの食害などで自生のものをほとんど見掛けなくなった」と指摘する。

 「昔は身近にあったホオズキを口にくわえ音を鳴らして遊んだ」と同所の上米良みな子さん(58)。地域の人々の思いを表すかのように道端の地蔵にホオズキをそっと供えていた。

【メモ】 日之影町花卉(かき)園芸組合では8月10、11日午前9時から道の駅「青雲橋」で第11回菊、ほおずき市を開催する。問い合わせは同町農林振興課(電話)0982(87)3906。