山中で猟犬と戯れる永田さん。命をいただく神聖さを感じながら、猟に励む=西都市

なり手不足受け戦力期待 女性猟師

 銃やわなでイノシシやシカを仕留める狩猟。“女性タブー”だった男社会で近年、「狩りガール」と呼ばれる女性猟師が活躍し始めている。背景には猟師のなり手不足があり、農作物の有害鳥獣被害を食い止めようと山に分け入り奮闘している。

 12月中旬の夕暮れ。美郷町南郷水清谷地区にあるまたぎ小屋の前にシカ5頭が横たわる。同町の猟友会メンバーら約10人が仕留めた獲物だ。

 「生き物を解体し、命をいただくまでが猟師の仕事」と男性に交じってナイフを振るうのは竹内文美(あやみ)さん(27)=日向市。小屋の梁(はり)を利用してつり下げられ、湯気を放つほどに温かい雌ジカの体に手早く刃を入れる。前肩、背、足の順に肉を切り落とし、解体後にみんなで食べるのが習わしだ。
 竹内さんは猟をしていた夫の姿を見て「自分も猟をしたい」と一念発起。子ども3人を育てながら銃の資格も取得した。平日は仕事をしており、猟をするのは休日のみ。体力的にきついこともあるが「自分で捕った肉を子どもに食べさせれば、命の大切さに触れてもらうきっかけにもなる」とやりがいを語る。

 県によると、高齢化やなり手不足などを背景に、県内の狩猟免許交付件数は1978(昭和53)年度の1万5596件をピークに、2017年度は5667件まで減少。一方、女性への狩猟免許交付件数は同年度64件で、直近の12年度の38件から1・7倍増加。担当課は「猟師数が減り、女性も受け入れられる状況になった可能性がある」と話す。シカやイノシシなどの野生鳥獣による17年度の被害額は3億9854万円で深刻な状態が続いており、女性が新たな戦力として期待されている。

 西米良村でも14年9月に初めて狩りガールが誕生。同村役場に勤める中武麻依さん(28)だ。有害鳥獣対策を担当していた当時、畑や水田を荒らされる村人の苦労を目にして「自分も力になれれば」とわな猟免許を取った。動物が踏むとワイヤが足を締め付ける「くくりわな」を使い、猟師歴約20年の黒木利安さん(72)と共に山中に仕掛けており、「地域を守る気持ちに男も女も関係ない」と話す。

 女性ならではの取り組みも進み、同村に住む小牟田(こむた)明歌音(あかね)さん(39)はシカやイノシシの革を使い、ピアスなどを手作りして販売。「これまで廃棄されていた革を女性目線で生かしたい」と意気込む。

 西都市には猟師歴約10年のベテランも。上揚(かみあげ)地区の永田菜穂子さん(58)だ。「最近は自分と同じ女性が増えてきて喜ばしい」と笑う。猟を始めた当初は「山の神様は女性が山に入るのを嫌がる」などの言い伝えがあったため、女性への風当たりが強かったが、高齢化で猟師をやめる人が増え、そうした風潮は少しずつ変わってきたという。

 病気の後遺症が残る夫と共に山に入る永田さん。生き物を殺すことへのためらいから引き金を引けないこともあったが、命のやりとりに触れ、考えが変わった。「狩猟は残酷な世界ではなく、命を感じる神聖なもの。それを忘れずに肉をいただくことが大事」とほほ笑み、犬と共に山の中を進む。