会社のことを知ってもらおうと、ブースを訪れた高校生に実演を交えながら商品の説明をする企業の担当者(中央)
みやざきテクノフェア 工業高生、進路へ熱視線
宮崎市で11月22、23日に開かれた「みやざきテクノフェア」。ものづくり企業の技術とアイデアが詰まった製品がずらりと並んだ会場で目に付いたのは、熱心にブースを巡る工業高校生の姿だ。就職先は大手や都市部に目が行きがちな高校生たちだが、フェアは地場企業の底力を認識する貴重な機会となっていた。生産制御システムの構築などを手掛け、開発、営業拠点を宮崎市に置く南九州向洋電機。延岡工業高機械科2年の塩月健太郎さん(17)がそのブースの前で足を止めた。置かれているのは最新の3Dプリンター。それで作られた樹脂製のボルトやナット、市販品を精巧に再現したフィギュアも並んでいる。
「こんなに高性能な製品が宮崎でも作れるとは…」。熱心に製品を眺める塩月さんに、同社の社員が声を掛けた。ものづくりへの思いや就職のこと、最先端の技術について…。県外の大手メーカ-への就職に憧れていたが、社員の言葉に耳を傾けるうち「県内企業も選択肢の一つになる」。
自動車部品、IT関連、照明メーカーなど多彩な分野から約50企業・団体が出展。高校生約500人も来場し、それぞれ興味を引かれたブースを見て回る。中でもにぎわいを見せたブースの一つが、高原町に研究製造拠点を持つ音響・振動計測器メーカーのアコーだ。
同社の主力商品の一つである騒音や振動の測定装置。どんな小さな音や振動も即座に数値化できる精巧さに高校生たちも目を見張った。「技術の進化を肌で感じた」と宮崎工業高化学環境科2年の吉永航也さん(17)。高原で生まれた製品が世界中で使われていることも、生徒たちを驚かせた。
企業関係者にとってフェアは格好のリクルートの場。各社、製品に興味を持った学生を引き留めては実演し、製造工程などを熱心に説明。アコーの田中啓一研究開発室長(45)も「パンフレットを使った通り一遍の就職説明会と比べても生徒の食いつきが違う」。県高校教育研究会工業部会が昨年9月に実施した調査では、工業科のある県立7高校で、県内就職を希望する2、3年生は2〜3割にとどまる。だからこそ、「技術に直接触れ、地元にも全国に誇れる企業があることを知ってほしい」と願う。
フェアを主催した県工業会の羽生宗浩事業担当課長(52)は「進路選択に入る前からPRすることが大切」と強調する。フェアには市内の中学生約330人も参加。高校生が開発した遊具やロボットに触れ、ものづくりの面白さを味わった。羽生課長は「中学生には理科の楽しさを、高校生には企業を知ってもらう。地道に続けることが地元に人材をとどめることにつながる」と力を込める。