林と山壁に囲まれた約35アールのゴーヤー畑。土作りから5月の定植、剪定、摘葉、摘果、収穫と作業は半年以上続く
朝露まとい輝く夏野菜
緑色のイボイボした表面、食すと程よい苦みが特徴のゴーヤー。夏真っ盛りの今、露地栽培の産地の一つ、宮崎市田野町の畑では旺盛に育ったつるが棚を形成し、生産農家は手入れや収穫作業に追われている。日が昇ると棚の中に光が差し込み、朝露をまとったゴーヤーが輝いて見える。県内のゴーヤーは露地とハウス促成栽培が行われ、一年を通じて出荷できる。通常の露地栽培は8、9月が出荷のピークだが、同町のゴーヤー研究会(川越勉代表、28人)では生産量の落ちる9〜11月に安定供給できるよう栽培方法を工夫している。
川越代表(59)の畑は約35アール。約1・5メートルの幅で畝と畝をU字形の支柱でつなぐとトンネルができ、そのトンネル同士をネットでつなぐ。さらに、苗の定植間隔を通常の2倍の4メートルにすることで、ゴーヤー棚にむらなく光が降り注ぐ現在の栽培方式にたどり着いた。「今は果実の成りを極力抑えて、細やかな剪定(せんてい)や摘葉、摘果を怠らないことが大切」と川越代表は早朝から汗を流す。
熱帯アジア原産のゴーヤーは江戸時代に中国から日本に伝わったとされ、本県でも、古くから家庭で作られてきた。農産物としての出荷は1960(昭和35)年に始まり、その7年後に旧佐土原町で促成栽培が始まったと「宮崎の野菜史」に記される。農林水産省の統計(平成24年産)によると、本県は作付面積、収穫量ともに全国3位。2001年に放映されたテレビドラマによる一大ブームで出荷量は05年まで急増したが、その後は減少傾向にある。
そこで、県やJA宮崎経済連ではビタミンCの豊富さに着目し、ブランド野菜「みやざきビタミンゴーヤー」として消費拡大に力を入れる。「今後も消費者が求めるゴーヤー作りを目指し、天候や気候に左右されない技術を確立したい」と川越代表。全国屈指の日射量を誇る気候に恵まれた本県だが、全国への周年出荷を支える生産者の熱い情熱が垣間見えた。
【メモ】ニガゴリやニガウリといえば細長い肉薄の品種を想像する人も多いだろう。本県では2001年以降、県が育種した紡すい形で肉厚のオリジナル品種が普及。テレビによる一大ブームとも相まって全国的に呼称「ゴーヤー」が浸透していき、県内でもその名を広く用いるようになった。