床下の診断を行う菊池さん(右)ら。床束のズレなどを細かくチェックする
住宅耐震化 動き広がる 自治体助成「活用を」
天井からつぶれ、重なるように崩れた住宅、飛散した窓ガラス、むき出しになった床下-。熊本県などを襲った一連の地震では約13万棟以上の家屋が被害を受けた。犠牲となった69人(関連死の疑いを含む)の死因の多くが倒壊した家屋や家具の下敷きになる圧死で、改めて家屋の耐震化や防災の重要性が叫ばれている。本県でも最大震度5強を観測し22棟の家屋に被害が出ている。減災のために今できることは何か。県内の動きを探った。県に登録された木造耐震診断士で建築士の菊池富男さん(64)=延岡市=が依頼を受けた同市内の耐震診断の現場に同行した。作業では屋内外にできたひび割れなどの確認をはじめ、屋根裏や床下にも潜り込み、基礎など隅々まで老朽化状況を点検。家屋の部位や劣化事象などが明記されたチェックシートに沿っての診断作業は3時間程度で終了した。
依頼した同市若葉町の奥村末喜さん(85)は「結果はまだ出ないが、丁寧に隅々まで見てもらい一安心。いずれは長男に譲りたいと思っている家なので、安心安全な状態にしておきたい」とほっとした表情で話していた。
こうした耐震診断・補強工事に対し、県は各市町村を窓口として助成を行っている。対象は旧耐震基準法に準じた1981(昭和56)年以前に着工された木造住宅で、県建築住宅課によると、熊本地震後に申し込みや相談が相次いでいるという。菊池さんも「既に昨年の倍以上の申し込みがある。最悪の事態が起きないよう、ぜひとも行政からの補助を利用して診断・補強工事を受けてほしい」と訴える。
現在、本県にある46万2000戸の住宅の耐震化率は77%(2014年度)で、13年度の全国平均82%を下回っている。宮崎大学工学部の原田隆典教授(63)は「公共施設を含め耐震化は急務だが、工事にはある程度のコストがかかる。頑丈な机などシェルターになるものの確保や部分補強という手段も大事」と指摘する。
また、宮崎県防災士ネットワークの芝崎敏之副理事長(70)は屋内での防災の重要性も強調。家具の固定はもちろんのこと、ドアや窓をこじ開けるためのバールを玄関に常備したり、窓ガラスの飛散防止のためにフィルムを貼ったりするなど簡単な工夫が減災につながる。「自分でできる範囲のことは準備しておくべき。『公助』より、まず『自助』の意識を持ってほしい」と芝崎さんは力を込める。
今回の隣県での震災を教訓として、災害に備える県民が1人でも増えることを願っている。改めて身の回りに潜む危険を確認してみてはどうだろうか。