飼育する前に、両生類の特徴や生息環境などを学ぶ授業が行われた=2月3日
古里の希少生物 残したい 学校近くに環境整備、放流
希少生物のオオイタサンショウウオが学校周辺に生息する宮崎市の古城小(黒木敏朗校長、126人)では、昨年から児童による飼育観察に取り組んでいる。今年も2月から育ててきたオオイタサンショウウオを5月中旬に放流。希少生物との触れ合いを通して、自然や命の大切さを学んだ子どもたちの活動を追った。オオイタサンショウウオは国と県の絶滅危惧種に指定されている両生類で、成体の体長は15センチほど。大分県が主な生息地で、本県では高千穂町のほか同市の古城町、田野町などで確認されている。しかし、宅地開発などによる生息環境の破壊が進み、個体数の減少が懸念されている。
「子どもたちが古里に生きる貴重な生物を通し、郷土愛や理科力を高めてほしい」-。3月まで勤めた岩﨑郁雄前校長の呼び掛けで飼育を始め、地域住民の協力も得て学校近くに今年2月、産卵場所となるビオトープを整備した。
飼育観察を行ったのは、4、5年生で、1人1匹ずつ育ててきた。中には名前を付けたり、まめに観察日記を付けたりする児童も。4年生の藤並ひかりさん(9)は「生き物を育てたことがなかったので、日々の変化がとても楽しみ。古城小で貴重な経験ができてうれしい」と目を輝かす。
体長5センチほどに成長し、いよいよ放流へ。地域の人たちが見守る中、子どもたちは約100匹のオオイタサンショウウオをゆっくりと水の中や湿地に放した。5年生の河野孝紀君(11)は「元気に育ち、うれしい。また会いたい」と話していた。
古城地区サンショウウオ生息地保全委員会代表の児玉節男さん(75)は「地域の理解があってビオトープができた。子どもたちには自然について勉強し、古城に愛着を感じてほしい。活動が長続きしたら地域の人たちも元気をもらえる」と期待する。地域住民の温かい思いに包まれて育った一匹一匹は、小さな一歩を踏み出した。