自然の醍醐味(だいごみ)を感じられる日豊海岸の島巡り。リアス式海岸特有の荒々しい景色を目の当たりにする=延岡市島浦町
延岡の魅力売り込め 「自然体験」「食」で活性化
東九州自動車道の整備が着々と進んでいる。昨年末の都農-高鍋に続き、蒲江(大分県佐伯市)-北浦(延岡市)が2月16日に開通。北九州市-宮崎市の全線開通に明るい兆しが見え始めた。延岡市周辺では物流拡大や交流人口の増加が期待される一方、人口流出や企業撤退なども危惧される。期待と不安が入り交じる中、高速道を地域活性のチャンスにつなげようとする動きも出ている。NPO法人ひむか感動体験ワールド(高橋勝栄理事長、36人)は、都市部にはない広大な自然を舞台にダイビングや登山、カヌー、釣り体験など多彩な事業を手掛ける。現在、約30種類のメニューを用意。参加者は県内外から年間約9万人を数える。
その目玉の一つは、同市北浦町の沖合2キロに浮かぶ島々を巡る「島野浦クルージング」。岸壁の波間に浮かぶ色鮮やかなサンゴに時の流れを忘れ、自然がつくり上げた高さ10メートル、幅8メートルの巨大な岩のトンネルに息をのむ。
アウトドアの体験型メニューはリピーターも多い。同市北方町の比叡山(918メートル)では、長短合わせ約100ルートでロッククライミングが楽しめる。体力や経験に合わせた多彩なコース選択、国道218号から車で15分というアクセスの良さが自慢だ。
日豊海岸は多様な生物層が魅力。同法人によると、年間約3千人がダイビングに訪れ、その約7割がリピーターという。現在、4人に1人が宿泊。しかし、交通アクセスの向上で日帰り圏が拡大するため、高橋理事長は「地域の魅力をもっと磨き、宿泊型のレジャーをこれまで通り維持していきたい。延岡、県北ファンを着実に増やしたい」と語る。
食材の掘り起こしも急務だ。認知度の高い「空飛ぶ新玉ネギ」や「ひむか本サバ」などに加え、延岡市は「岩ガキ」のブランド化にも取り組む。市企画課の中村慎二課長は「北九州-宮崎の開通前に、一刻も早く商品化やブランド化を進めなけらばならない。いいものを売り出し、県内外での定着を図りたい」と力を込める。
「海端の雰囲気を楽しみながら北浦を味わって」。同市北浦町の阿蘇港の一角で今年1月にオープンしたカキ小屋は評判を呼び、既に約2千人が訪れた。経営者の水産業河野洋一さん(49)は「夏が旬の岩ガキ、冬が旬のマガキのほか、緋扇貝、沖アサリ、ワカメのしゃぶしゃぶなど、一年を通して満足してもらえる。この海には素晴らしい食材がある」と胸を張る。