竜房山麓の銀鏡神社。御神体の御鏡は、直径11センチメートル。周縁に十六葉を有する前漢時代の葉文鏡で日向国内最古に属する鏡の一つで重要文化財県指定を受けている

「イワナガヒメの鏡」伝説残る山里

 立夏末候、日の光が奥深い山と谷を照らし、村里を白く浮かび上がらせる。西都市銀鏡には「イワナガヒメの鏡」の伝説が残る。

 タカマガハラから降り立ったニニギノミコトが散歩していると、オオヤマツミノコミと出会い、2人の女神を嫁に差し出された。ニニギノミコトは好みでなかった姉のイワナガヒメを退け、妹のコノハナサクヤヒメと結ばれた。イワナガヒメは大いに恥じて鏡をのぞき込んだ。ごつごつとした竜のような顔が見えたため、深く嘆き悲しみ鏡を北西へ投げた。鏡は竜房山(リュウブサヤマ)にとどまり、昼夜光り輝き西方の村里を白く照らした。やがてそこは白見村と名付けられた。竜房山の大木に懸かっていた鏡が銀鏡(白銅鏡)だったことから白見を銀鏡と表すようになった。

 霊山竜房山を御神体とする銀鏡神社の濵砂則康宮司(46)は「山には小学校3年のころにお宮を上げるということで、先代宮司ら数人と登った。女神の宿る山なので8合目からは女人禁制の山として伝えられている。それ以来踏み入っていない。地元では入山する時はお神酒を捧げるなど山を神としてあがめている」と畏敬の念を抱く地元の様子を教えてくれた。

 銀鏡には「かりこぼうず」という精霊も伝わっている。いたずら好きで、冬は山に登り、夏は川へ降りてくる。神社の近くにあった松の木は「留まり木」と言われていた。
 霊山で鳥の声を聞きながら谷を抜ける風に当たっていると、いにしえから伝わる厳格なしきたりに身の締まる思いがした。

【メモ】銀鏡神社の銀鏡神楽は国の重要無形民俗文化財に県内で第1号指定された。星空の下12月14日夜から翌朝にかけて三十三番が舞われる。地元では8月中旬夏祭りを開催、盆踊りや花火大会と多くの人出でにぎわう。