パパイアの表皮が傷つかないよう一節一果を基本に、きめ細やかな剪定(せんてい)作業や温度管理を欠かさない田代さん夫婦。出荷の時期まで丹精している
爽やかな香りと甘さ追求
世界で“オンリーワン”の品質を追求し、宮崎市清武町を中心に熱帯果樹のパパイアを栽培している。独特の甘みや栄養価の高さで「天使の果物」、「メディカルフルーツ」とも呼ばれる。「一度食べたら病みつきになる」とファンを増やしており、生産者はブランド力向上や採算性の課題に取り組みながら産地化を目指している。本県の本格的なパパイア栽培は、2004年に旧清武町で始まり、現在はJA宮崎中央パパイア研究会(田代敏徳会長)の8戸が一年を通じて出荷を続けている。50アールのハウスで約750本を栽培する田代会長(58)=同市清武町船引=の農園を訪れると、青々と茂る葉っぱが太陽に透け、渦を巻いた幹がハウス一面に広がっていた。これは、太いもので根元の幹回りが70センチ、高さ10メートルほどに成長するパパイアを通常の施設で栽培する技術。苗を寝かせて植え、成長に伴いひもで引くなどして育てる「らせん仕立て法」だ。
手掛けるのは、香りと甘さが爽やかな日本人好みの品種「サンライズ・ソロ」。寒さや連作に弱いなど生産は難しいとされていたが、味、形が良く、丈夫な株の選抜を何度も行い、温湿度の管理を試行錯誤していった。じっとりと汗ばむハウスは、年間を通じて果実に露が付かない湿度で室温20〜30度。葉に寄生するハダニの天敵カブリダニがすみやすい環境を保つ事で完全無農薬を実現した。
こうした技術と管理法が実を結び、10度程だった糖度は13〜17度に。本県の生産量は2014年に約50トンで、沖縄県に次いで全国2位。県営農支援課の山口和典主幹(51)は「品種選びから生産管理まで、皆が同じ目標の下でやってきた。品質では他に負けない」と太鼓判を押す。JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」で提供が始まるなど、着実に評価を高める。
「作り始めた頃より、格段においしくなった。消費者によりいいものを届けていくだけ」と田代会長。今後もパパイア作りに情熱を傾け続ける。
【メモ】植え付けから約10カ月で収穫でき、年中実を付ける成長の早さが特徴のフルーツパパイア。春の4、5月と秋の10、11月に出荷のピークを迎える。約7割が関東に送られ、東京都の伊勢丹新宿本店などに並ぶ。残りの2割が関西、1割が県内で消費され、宮崎市の宮崎山形屋で購入が可能だ。