中之又神楽のけいこをつけてもらう元留学生の父親たち。「扇子のさし方は、こんげしてこうど」。古老の指導もうれしさからついつい熱が入る

絆が結ぶ山村交流 温かさ魅力“ファン”集う

 子どもたちの姿が消えた運動場に年に1度、にぎわいが戻る―。木城町中之又地区の「中之又大運動会」。2009年に閉校した中之又小に10月31日、地区住民や元山村留学生たちなど約80人が集い、パン食い競走や踊りなどを楽しんだ。学校があったときと同じように温かい雰囲気に包まれ、山あいに歓声がこだました。

 町中心部から32キロ離れた山間部にある中之又地区は人口59人、高齢化率72・9%(1日現在)の過疎集落。児童数減少に歯止めがかからない同校は1995年以降、県内各地から山村留学生を招き存続へ活路を見いだしてきた。しかし、地元児童の入学が見込めないこともあり昨年、閉校を余儀なくされた。「集落はこのまま一気に廃れるのでは」。里山から子どもたちの声が消え、住民たちは未来を危惧(きぐ)する。

 そんな中之又の人々を元気づけようと、運動会参加者の半数は山村留学生OBや元教職員などの「中之又ファン」が占める。

 「人情味あふれる皆さんと交流を重ねるうちに、すっかり中之又のとりこになった」。一人娘を山村留学させていた日向市財光寺の自営業峯村清士さん(54)は親子3人で参加し、買って出た放送係の仕事を黙々とこなした。前夜は元留学生の父親グループと、昨年に続き12月に奉納する町指定無形民族文化財・中之又神楽のけいこにも参加。指導に当たる地区の古老たちもいつになくうれしそうだった。

 女性たちは田舎の味で訪れる人たちをもてなす。中之又特産加工部や地区婦人部のメンバーは、早朝から公民館で振る舞いの準備。煮しめや豚汁、なますなどを手際よくこしらえた。加工部の中武昌子さん(57)は「何を食べさせようかと考えるだけでうきうきする。喜んでくれる顔を見ていると元気がもらえる」と声を弾ませた。

 住民のよりどころだった小学校が廃れないように週2回、清掃作業を続けている大和田ミユキさん(70)は「荒れた校舎を見るのは忍びない。来てくれる人をがっかりさせたくない」といつも以上にきれいにして迎え入れた。

 多くの協力で今年も盛会に終わった。公民館長の中武春男さん(57)は「住民だけではこんなに楽しい時間は過ごせない。皆さんの気持ちが本当にありがたい」と感謝した。