大手門をくぐり下校する飫肥小の子どもたち。「こんにちは」と元気いっぱい
歴史物語るこけむした石垣、林立する巨木
飫肥杉の門構えが重厚さを醸し出す日南市の飫肥城。丘陵地に本丸を築き外郭を設けた平山城は、こけむした石垣や林立する飫肥杉の巨木が歴史を物語る。城は小京都と呼ばれる飫肥城下の発達を促してきた。今も観光客を呼び込み地域とともに歩んでいる。飫肥城は南北朝時代に土持氏が創建したとされ、戦国時代には薩摩の島津氏と都於郡の伊東氏が争奪戦を繰り広げた。後に伊東氏は豊臣秀吉の九州平定に加わり、その功労で城主となり幕末まで飫肥藩五万石を治めた。
日本城郭協会によると、近世城郭の形は、1686(貞享3)年からの大改修で整ったという。天守閣はなかった。建物は明治に入り取り壊されたが、1978(昭和53)年と翌年、大手門と書院建築の松尾の丸が復元された。同協会は「江戸時代の城郭遺構が保存され、構造物も史料に基づき、よく復元してある」と評価する。
城内には飫肥小があり、本丸跡の運動場に子どもたちの元気な声が響く。明治の外交官小村寿太郎侯らを輩出した旧藩校「振徳堂」の人材育成の精神は、教育にも生かされている。自らすすんであいさつする「さきがけあいさつ運動」を地域ぐるみで推進。教頭の新町芳伸さん(50)は「北海道の観光客から『あいさつが大変うれしかった』とはがきが届き、子どもたちの励みになっている。地域には、立場をわきまえ意見が言える人が多い。そんな礼儀正しさは脈々と受け継がれている」と誇らしげだ。
観光ボランティアガイドの鈴来信子さん(54)は言う。「この街はおもてなしの心に満ちているのです」
【メモ】29日~5月5日、ゴールデンウイークイベントを開催。泰平踊りのほか手作りのかぶとでの記念撮影、人力車無料体験などがある。問い合わせは日南市観光案内所TEL0987(31)0606。