起伏に富んだ平和台公園で体力の訓練。遠くにはホテルオーシャン45も望める=平和台公園

頂目指し限界挑戦 総体へ最後の追い込み

 大きな登山用リュックサックを背負った高校生が無機質な階段を駆け上がる。息が上がり、足の痛みに顔がゆがむ。額から玉のような汗が流れ落ち、白く乾いたコンクリートに黒い斑点を描いた。7月31日から兵庫県で開く全国高校総体登山競技に向け、宮崎大宮高と都城西高の山岳部員は最後の追い込みの真っ最中だ。

 「友達に『登山って何をするの』とよく聞かれる」と、都城西高の有川めぐみ主将。1チーム4人の団体戦で競う登山競技は、ただ山に登るだけではない。テント設営や天気図作成、観察力など10項目の合計点で順位を競う。体と頭をフルに使い、行動の一つ一つが点数に結び付く気の抜けない競技だ。

 競技は1日約10時間歩き続け、県総体には走破タイムを競う特区間もあり過酷だ。部員たちは歩荷(ぼっか)と呼ばれる訓練で山行に耐える体力を養う。宮崎大宮高では20キロのリュックサックを背負い、4人が隊列を組んで3階建て校舎の階段を30往復。歩いて登る通常の訓練に、全速力で駆け上がる練習を織り交ぜている。激しい訓練に徐々にペースが落ちると、「行け」という古谷智彦主将の活を入れる声が、放課後の校舎に響いた。

 テント設営や天気図作成などには豊富な経験が必要。部員は時間を見つけては校庭にテントを張る。制限時間は10分。ペグを打ち込む深さ、角度、向きなど細かいところまで注意を払って設営。また天気図は夜、自宅のラジオで気象通報を聞きながら書き上げる。古谷主将は「天気図は書いた数だけ上達する。しばらく書かないと忘れてしまう」と受験勉強の傍ら、日々の修練を欠かさない。

 部室には山に関する本がずらりと並び、壁には登山用語の書かれた張り紙。山の標高や用語、植物の名前を問われるテストがあり、事前の準備無しには上位は望めない。大川内佳帆さん(都城西高)は「高千穂峰の標高は“イチゴ無し(1574メートル)”」と教えてくれた。暗記に語呂合わせを用いるなど、高校生らしい発想で知識を深める。

 陸上、テニス、卓球…。山岳部員の中学での部活動はさまざま。徳留彩香さん(都城西高)は「経験がなくても、新しいことに挑戦する意気込みさえあれば誰にでもできる」と競技の魅力を語る。

 ほかの競技のような派手な応援はない。自分の限界に挑み、時に励まし合いながらゴールを目指す山岳競技。県内では6校にしかなく、競技人口も少ないが、若い岳人たちは頂を目指し、着実に歩を進めていた。(写真部・成田和実)