永野監督の前に整列する部員。厳しい指導はすべて全国制覇のためだ
一瞬の輝き追求 全国制覇へチーム一丸
荘厳な曲が響き渡り、一瞬の沈黙の後、彼らは踊りだす。しなる体、垂直に伸びる腕と脚。軽やかな動作はさながら忍者だ。高校男子新体操の名門、小林市の小林秀峰高。7月末に沖縄県で開かれる全国高校総体(インターハイ)を目指し、蒸し暑い体育館で連日厳しい練習が続く。県内の高校唯一の男子新体操部で現在、部員は18人。インターハイ4回、全国選抜3回、国体3回の優勝を誇る。今年は全国選抜2位、九州大会2位と実力を示し、2年ぶりの夏の全国制覇を視野に入れる。
同校体育館にはOB会が贈った部旗が掲げられている。そこにあるのは「忍耐」の文字。毎日の練習はこの旗に一礼することから始まる。一斉に整列、「お願いします」と声を振り絞る。高まる緊張感。「先輩たちの功績に身が引き締まる思い」。3年の朝留涼太主将は伝統の重みをかみしめ、フロアに立つ。
インターハイを間近に控えた練習は、5本連続の倒立から。成功するまでほかのメニューには移れない。本番では2秒以上静止、6人の動きが完ぺきにそろわなければ減点される。「プレッシャーに耐えられなければ駄目」と永野護監督。その厳しい目が光る中、部員たちは必死になって倒立を繰り返す。
「もっと集中、集中」。疲れを振り払うように声を出し、励まし合い、ひたすら整然の美を追い求める。100回以上、2時間余りかかったこともある。3年北原翔太君は「細かなミスが命取りになる」と表情を引き締めた。
大胆な組み技も新体操の醍醐味(だいごみ)だ。6人が一体となって積み上げる、高さ5メートルの3段タワーは圧巻。頂上に立つ3年山口貴大君は「仲間を信用している。恐怖心はない」とはにかんだ。
そんな演技の華やかさをハードな練習が支えている。部員のほとんどは小林中で新体操を経験しているが、練習量は中学時代とは比較にならないほど多い。「高校に入ったころは、帰って倒れ込むように寝ていた。疲れて食べるのも忘れたぐらい」と部員たちは冗談交じりに話す。
つらいときは家族のようなチームワークで乗り切ってきた。その努力のすべては一瞬の輝きのためにある。「演技をばっちり決めたときの快感、歓声がたまらない」。幼さが残る顔に、練習では一度も見せなかった屈託のない笑みが浮かんだ。(写真部・木上友貴)
=8月は休みます=