【評】すべて傾いた不安定な構図の中、正体不明の子どもたちが、森からいきなり現れてきた。顔からある程度の情報は読み取れるものだが、面の先入観がまず飛び込み不意を突く。見慣れた森や道を実とすれば、表情から個性が消えた児童は虚であろう。実と虚を同時に写すのも、写真の不思議な魅力。写真家の故植田正治氏は「猿のマスクをかぶった自画像」「天狗出現」など面を使った名作が多く、今も世界中のファンを引き付けている。(写真部次長 沼口啓美)