「いのちのはうす保護家」代表の山下由美さん。人の表情を見せることが大事と考えていて、犬猫と接するときだけはマスクを少し下げるという

譲渡困難の犬猫守る 高齢多くみとりも

 高齢やハンディキャップのある犬猫を施設から引き取って保護し、希望者に譲渡する活動を続ける国富町の「いのちのはうす保護家」。現場を訪ねると、さまざまな事情を抱えながらも80匹が日々を懸命に生き、スタッフらは心を尽くして寄り添っていた。

 後ろ足を引きずり、犬のシゲルが近寄ってきた。床に目を移すとおしっこをしている。交通事故で足が不自由になったといい、排せつをコントロールできない。1日に何度もスタッフらが手でぼうこうを圧迫して促しているが、それでも頻繁に漏れてしまうらしい。

 保護した4年前は、思うように歩けずに戸惑う様子だったという。代表の山下由美さん(51)は「同じようなハンディキャップを抱えた犬と過ごし、自分の体のことを少しずつ受け入れてきた」と教えてくれた。

 シゲルを見詰める山下さんの優しい表情の裏には、強い決意がにじむ。15年前のこと。殺処分直前の犬猫をテーマにした写真展を見て「こうした子たちを救いたい」と思い立ち、ブログで情報発信を始めた。保護家を設立した約10年前からは公的施設が「譲渡困難」と判断した犬猫を引き取り、スタッフやボランティアと愛情を込めて守り育てている。

 そうした思いが通じているのか、犬猫たちは穏やかだ。1カ月ほど前に引き取ったばかりの19歳の老犬シロも、室内でのんびり。足取りはおぼつかないが、病気を抱えているわけではない。ただ、高齢のため飼い主は見つかりそうにない。あるスタッフは「ここで最期を迎えることになると思う」。

 シロに限らず高齢の犬猫が多く、避けて通れない日常になっているのが「みとり」。取材中にも年老いた犬のベンティーが旅立った。火葬前、花に包まれて横たわるベンティーのそばには「ありがとう」のメッセージ。スタッフらは「頑張ったね」と涙で見送った。日常とはいえ、決して慣れることはないのだという。

 手を合わせた後、そっと涙を拭ったスタッフら。犬猫たちの元へ戻り、いつものように夕食の支度に取り掛かっていた。