雨音を響かせながら葉の表面で弾ける水玉=都城市山之口町富吉。

葉に弾む雨音 豊作の予感

 「バタッ、バタタタッ-」。都城盆地の梅雨を知らせるように、サトイモの大きな葉が雨に打たれ重い音を響かせる。サトイモ生産量が2万5900トンで全国1位(2012年産)の本県。中でも都城市は、作付面積、生産量ともに県ナンバーワンを誇る一大産地だ。この時期、畑では3、4月に植えられた富士芋、石川早生(わせ)などの品種が背丈40〜50センチに育ち、雨音のリズムと葉の表面で水玉が弾けるさまが、まるで雨粒のダンスのように映る。

 サトイモはインド東部からインドシナ半島にかけての熱帯地方が原産地とされ、高温多湿を好む。同市で生産が盛んな理由について県北諸県農業改良普及センターの横山英二主幹(47)は「広大な農地に加え、霧島山系が恵む豊富な水量が栽培に適していたのでは」と推測する。

 同市山之口町富吉の紺家紀宏野菜生産連絡協議会会長(71)は、JA都城で営農指導員などを務めながら約50年、サトイモ作りに携わるベテラン。「梅雨になるとスイッチが入ったように葉がぐんぐん育つ」と手掛ける畑をいとおしそうに眺める。紺家会長によると、1975(昭和50)年ごろが栽培のピークだった。この後、連作障害で収量を落とす農家が出始め、追い打ちを掛けるように輸入物も増加。栽培の規模が縮小していったという。「生産量はとりあえず一番だが品質はまだ向上の余地がある。高品質安定生産を追求し消費者を喜ばせたい」と意欲を燃やす。

 全国トップの特産品だが、地元食材としての利用はどうか。経済連販売実績(2012年度)では東京、名古屋、大阪の大消費地が90%を占め、本県は1%にとどまる。皮むきでかゆみが出るなど下処理の手間が食卓を遠ざけていると感じている同市中町の家庭料理研究家江夏敬子さん(36)は、「離乳食にも使えるし美容、免疫力を高める成分も含まれる」と説明。「コロッケやグラタン、サラダなど用途も広い、手軽に作れるレシピの研究に力を入れたい」と熱を込める。特産品として知名度が低いと思われるサトイモだが、工夫次第で食材としての魅力が増しそう。今後の消費拡大への可能性を感じた。

【メモ】サトイモの県内生産量(2012年産)は上位から都城、宮崎、えびの、小林市、三股町。ぬめりに含まれる成分ムチンには老化防止や免疫力を高める効用などがあるという。都城市中町の家庭料理教室「敬子のLOVEらぼキッチン」では、地元食材を使った講座も開催している。問い合わせは同キッチン(電話)0986(77)2546。