沖水小での上演風景。子どもたちはたちまち物語の世界に引き込まれていった=都城市・太郎坊町

紙芝居街に広めたい 物語の楽しさを現代に

 三面開きの扉が開くと、心温まる物語の世界が広がる-。都城市を拠点にボランティアで紙芝居を上演している「紙芝居まねきねこの会」(久保田哲寛代表)。2015年に発足して以降、市内を中心に幼稚園や小学校、高齢者施設に招かれ、精力的に活動を続けている。

 50〜70代の28人が会員として活動し、これまでの上演回数は250回を超える。立ち上げのきっかけは、久保田代表(68)の「幼い頃の記憶」という。

 昭和10年代に誕生した紙芝居。久保田代表も小学生の頃、路上で開かれる紙芝居をワクワクして待ち、友達とのめり込んだ。「今の子どもたちにも、そんな心躍る経験をしてほしい」。こう思い立ち、文献を読んだり、東京にある団体「紙芝居文化の会」を訪ねたりと、知識やノウハウを習得。知人に呼び掛けて会員を募り、12人で活動をスタートさせた。

 会員たちは週2、3回開かれる上演をこなしながら、技術向上にも余念がない。物語に引き込むためのせりふ回しや、画面の抜き差しの強弱。作品選びは吟味を重ね、上演前は自宅に持ち帰り、練習を重ねる。久保田代表は「子どもたちに、『もっと練習してきてね』と言われたこともある。楽しんでもらうために努力し、それで上手になっていく仲間を見ると自分も燃えてくる」と語る。

 そんな会員たちによる上演会は、笑顔や感動に満ちていた。

 2月下旬、同市高崎町の高齢者施設をのぞくと、入所者の笑い声が響いていた。上演は3作品。打ち上げ花火をモチーフにした作品「どっかーん」では、観客も絵に合わせ、手拍子交じりに「どっかーん」と大声、自然と顔もほころぶ。上演が終わると、入所者の1人が「昔を思い出して本当にうれしい気持ちになりました。ありがとう」と涙ながらに会員に言葉を掛けた。

 同市立沖水小学校(786人、永野高行校長)では、朝の活動の時間を使い、定期上演を続けている。月に1、2回、15分というわずかな時間。それでも、子どもたちは「来てくれるのが本当に楽しみ」と、真剣なまなざしを向けてくれる。

 活動は会員の生きがいになり、交流の輪も広がった。「上演に行くたび元気をもらう」と久保田代表。「夢は都城を紙芝居の街にすること。やりたいことがたくさんあって時間がいくらあっても足りない」と少年のように目を輝かせた。