地をはうカボチャ。つるが周りの草にしっかりと絡み、茎の途中からは根が伸び力強く地面を捉える。朝日を浴びながら緑のジャングルに黄色い花が果実とともに彩りを添えていた
緑の畑を彩る黄色い花と実
梅雨半ばのカボチャ畑。早朝のひとときだけ黄色い花が開き、緑色の畑に彩りを添える。このわずかな時間を逃すまいとミツバチが羽音をたてながら渡り飛ぶ。国富町田尻の綾貴生さん(47)が無農薬で栽培しているカボチャは、県内ではまだ珍しいコリンキー。4月中旬に定植した35アールの畑には10センチほどの黄色い実が隠れるように膨らみ、収穫時期を迎えている。コリンキーは皮ごと生で食べられるカボチャで、完熟させずに若取りすることで癖が少なく、サラダや漬物などに向いているという。食物繊維も豊富で女性を中心に人気。ミキサーにかけてスムージーにするなどさまざまな食べ方が楽しめる。綾さんは「宮崎名物冷や汁に入れても彩りよくおいしい」と教えてくれた。
同町の農家に生まれた綾さんは脱サラして就農。ニラ栽培が軌道に乗ったところで、次は無農薬の果菜類に挑戦しようと昨年からコリンキー栽培を始めた。カボチャの栽培方法はつるを誘引する立体栽培もあるが、父の健一さん(74)に習って地をはわせる栽培法を選択。伸びたつるが草に絡みつき、茎の途中からも根が伸びることでしっかりと地面を捉えるカボチャの姿を見て、自然の摂理にあらためて気付いたという。
綾さんは障害者の力を農業に活用する「農福連携」にも積極的に取り組む。2014年6月から障害福祉サービス事業所・サクラプリンテック(宮崎市本郷北方、井上貴文理事長)と契約。コリンキー栽培では今年初めて受粉作業と収穫を委託した。
妻の美乃さん(39)は「一つ一つ作業を教えるのは大変だが、夫婦2人ではできることが限られる。慣れてくると作業効率も上がり大変助かっている」と手応えを感じていた。「コリンキーは、大きさで収穫時期を判断すれば良いので障害者でも分かりやすい。農福連携に向いているのでは」と話す綾さんは、楽しそうに収穫する様子に目を細めた。
収穫されたコリンキーは6月下旬から宮崎市内の契約スーパーや県内外の飲食店に出荷される。
【メモ】コリンキーは2002(平成14)年に国内種苗メーカーによって品種登録された、生食できるカボチャの品種。ベータカロテンやビタミンB1、B2、ビタミンC。食物繊維や鉄、カルシウム、カリウムを豊富に蓄えている。キュウリのような味やズッキーニに似た食感が楽しめる。