見頃を迎えたコバノセンナ。11月下旬までドライバーたちの目を楽しませる=10月25日、宮崎市内海

「黄金海岸」を復活 日南海岸沿いに苗植樹

 柔らかな朝日に照らされ、黄金色の景色が輝きを増す-。日南海岸に秋の訪れを告げるコバノセンナ。今年も宮崎、日南市境にある「いるか岬」近くの国道220号沿いで咲き誇っている。宮崎観光の父・故岩切章太郎さんが描いた南国情緒あふれる風景は「黄金海岸」としてなじみ深いが、一時は壊滅状態にあった。その風景を復活させ、守り育てようと宮崎交通OBを中心につくる「コバノセンナを育てる会」(長友睦郎代表世話人、25人)が人知れず手入れに汗を流している。

 岩切さんが「黄金海岸」の構想を得たのは1957(昭和32)年、南仏コートダジュールでミモザが彩る海岸線を視察した時だった。しかしミモザは台風に弱く失敗。最終的に南米原産のコバノセンナになったという。この「黄色い花」の選定過程を知る宮交OBで県芸術文化協会の渡辺綱纜会長は「ツワブキも試したが、食用としてたちまち摘み取られた」と苦笑しながら当時を振り返った。

 昭和40年代の新婚旅行ブームで観光客を楽しませたコバノセンナ。しかしブームの終わりとともに手入れが行き届かなくなり、2000年ごろには壊滅状態になっていた。当時、同社で景観保全事業をしていた長友さんは胸を痛め、社員からボランティアを募り04年から復活に乗り出した。同会設立は長友さんの退職後の06年、日南市富土の実家に70平方メートルのビニールハウスを建て、年間約千本を育苗。施肥や除草作業を定期的に行い、現在の見頃につなげている。

 3月下旬、苗の鉢上げ作業がピークを迎えていた。「今年は暖かいから成長が早い」と長友さん。20〜30センチに育った苗をポットに移し替えていく。宮崎市の自宅から作業場まで車で約40分かかるが、「水は足りてるかな、風通しは大丈夫かなと心配で、つい見に来てしまう」という。愛情いっぱいに育った苗は植栽の時期を待つ。

 5月下旬には会員を含む約70人が、いるか岬周辺で植栽作業。苗600鉢を丁寧に植えていった。父親と一緒に20鉢を植えた宮崎市小松台小4年鬼
束誠一郎君(9)は「おじいちゃんの家に行く時に通る道。植えた花を早く見たい」と泥まみれで作業を楽しんだ。同会は今年、同市青島こどものくにでも300鉢を植栽した。

 今年、国定公園指定60周年を迎えた日南海岸。コバノセンナは息を吹き返したが、長友さんは当時、沿道修景で植栽されたブーゲンビリアやツバキなどが雑木に覆われている現状を嘆く。「昔の日南海岸は本当に美しかった。以前の姿を若い世代に見せられるよう、もっと頑張らないとね」。岩切イズムに共鳴する同会の活動は続く。