夕闇に浮かび上がる立縫区・中町の石畳通り。風格ある町並みは町の繁栄と衰退、観光での復興を見守ってきた

江戸時代からの栄華伝える京風町並み

 江戸初期から大正時代にかけて上方との交易港として栄えた日向市美々津町。耳川流域の木材や木炭を運び出し、代わりに薬や反物などを持ち帰り、町には回船問屋や呉服商が軒を連ね「美々津千軒」と呼ばれた。格子窓の町家や白壁の商家といった京風の町並みは、当時の栄華を今に伝える。

 町中心部立縫区を区長の佐藤久恵さん(69)と歩いた。3本の主要道が最長で南北に約350メートル、それと交わるように「ツキヌケ」と呼ばれる防火用道路が走る。敷き詰められた石畳や約180年前に建てられた町家もあり、すべて美しく保たれていることに驚く。 途中、軒先で井戸端会議中の女性3人に出会った。生まれも育ちも美々津の「おいぬきさん」たちで、跳ね上げ式の縁台「バンコ」に腰掛けて楽しそうだ。佐藤さんも話の輪に加わり「用事を忘れて話し込んでしまうこともあるとよ」と笑い合う。

 「町の人が私を受け入れてくれたように、私も観光客を温かく迎えたい」。延岡市出身の島津理さん(64)は4年前、和カフェ&食雑貨「理庵」を開業した。1836(天保7)年建築の商家を改装。黒光りする柱や梁(はり)が歴史を語る店内で客はくつろぐ。

 住民の熱心な保全活動が実り、国の重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)に指定され25年。郷愁を求め多くの観光客が訪れる。「子どもたちも元気のいいあいさつで歓迎するのよ。たとえ外国の人でもね」と佐藤さん。学校帰りの美々津小5年赤木来歌さんは「いい町って言われるとうれしい。世界に知られる美しい町にしたい」と誇らしそうにほほ笑んだ。

【メモ】回船問屋を復元した日向市歴史民俗資料館では、神武天皇の東征に始まる美々津の変遷を学べる。市内の貴重な歴史的資料も展示。月曜(祝日の場合翌日)休館。同館TEL0982(58)0443。