朝日を浴びて神々しく輝くブドウ棚のつらら。凍った枝が春の芽吹きを待っているかのようだ

朝日に輝く氷のシャンデリア

 ブドウ棚にひしめく大小のつららが、朝日を浴びてシャンデリアのように輝いていた。高品質で知られるブドウの産地、都農町の各農園では、春の芽吹きを良くするため散水するなど、豊作を願いながらの作業が丹念に行われている。

 氷点下7度、厳しい冷え込みの中、河野進さん(59)方の農園(30アール)を訪ねた。歩くたびに「バリバリッ」と凍った地面が音を立てる。河野さんの場合、翌朝が冷え込みそうだと分かると、凍結を狙い夕方から早朝までスプリンクラーで散水する。冷やすことで一時的な休眠状態をつくるのだという。

 ブドウ栽培を始めて30年になるという河野さん。現在、キャンベルアーリーなど20品種を扱う。20年ほど前に山形、岡山県産の苗木を仕入れた際、それぞれ気候の異なる土地の苗木だからなのか、芽吹きの時期にずれがみられた。そのことに疑問を抱いたまま数年栽培をしていたが、当時、ブドウ棚を凍らせていた先輩にならって「凍結法」を試したところ、芽吹きがそろうようになった。

 ブドウ棚につららを作り始めて今年で12年目。この時期1、2回は枝を凍らせるようになった。つららの美しさが評判になり、見学に訪れる人も。河野さんは「尾鈴のブドウのアピールにもなるし、これからも続けたい」と意気込む。

 町内では年間約390トンを生産。県内外に出荷するほか、一部は都農ワイナリーで加工されている。

 一方で、近年、町内のブドウ生産量は横ばい。同町産業振興課の藤岡幸司係長(41)は「今後もワイナリーの充実を図りながら、新品種の生産を働き掛けたい」と力を込める。

 都農の四季をこれからも彩るブドウ栽培。収穫の季節が楽しみだ。

【メモ】都農町でブドウの生産が始まったのは昭和30年代。台風被害や温暖な気候もあり果樹栽培には適してないとされたが、生産者の技術や努力によって県内でも安定した生産地として確立していった。現在は、町内47人がデラウェアなど15品種ほどを出荷している。